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2023-08-24 21:25

中国版失われた30年が始まった

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 中国の不動産価格が下がっている。もちろん中国のことであるから、どこかに責任を転嫁して、起業家などを逮捕しその資産を回収して、負担を投資家に求めて終わってしまうということになる。しかし、そのようにすることによって、一つは銀行が債務超過になるリスクがある。いわゆる貸し倒れが増加し、そのことによって経営が悪化することによって銀行が倒産するのである。日本では、バブル崩壊時、例えば北海道拓殖銀行が廃業した時など、北海道拓殖銀行をメインバンクにしていたすべての企業が経理悪化しまた新規の投資ができなくなった。もちろんそれはある意味覚悟されていたことになるが、しかし、ほかの銀行も自分たちも北海道拓殖銀行のようになるのではないかということから、いわゆる「貸しはがし」や「不動産担保の追加」などをおこない、それができない企業から容赦なく取り立てを行った。要するに日本の銀行すべてが「貸しはがしなどを行い、資金の新規投資をしなくなった」結果が、現在の「失われた30年」の始まりである。そのようになり、会社経理が悪化し、企業が徐々に倒産したりまたは日本における資金調達が難しくなったことから、海外に活路を見出すようになり、日本の投資家や一般の人々も、全く投資をしなくなってしまったのである。そのことがより一層金融市場の冷え込みを誘うことになり、負のスパイラルが発生することになるのである。

 さて、中国の不動産も同じような状況になる。単純に不動産市場が悪化するというのではなく、そのまま「一般人の投資熱が冷める」ということが起きるのである。バブル経済というのは、銀行預金が「投資」という形につながりそのことによって、企業が実態以上の大きな投資を受ける状況のことを言う。もちろんそれは資産価値が今後値上がりするという状況から行われるのであり「見込み投資」になるが、値上がり曲線が、逆に値下がりになった瞬間に多くの人は「投資をしてもそれが目減りする可能性」を考える。場合によっては「ゼロ」どころか「マイナス」になってしまうのである。そのような投資をするくらいならば「タンス預金」のほうが良い。要するに投資市場や金融市場の信用が「必要以上」に下がってしまうということになるのである。バブル経済期は、日本も海外に投資をし、また一般人も「腰にウエストバック」をつけて海外旅行をしていた。それが中国に代わっていただけで、日本はそのような中国人に対して「爆買い」を期待するという「中国バブルのおこぼれ」を、お恵みいただいている状況であった。しかし、これがコロナウイルスで、そうではなくなったのである。日本のバブル崩壊は三重野日銀総裁による金融引き締めと、住専疑惑による住宅市場の冷え込みであったとされているが、中国の場合はそのような金融を、調子よい状態を避けるようなことはしない。しかし、それが異なウイルスによる「ゼロコロナ政策」となれば別である。まさに「政治的なメンツ」がそのまま「中国の経済を悪化させる結果になる」ということになる。それが、そのまま問題に直結し、そのまま「バブル」が崩壊するという形になったのではないか。さて、専門家によると、中国の場合は日本より悪化するというように言われている。その理由は簡単にまとめればつぎの3点のとおりである。

(1)中国のメンツ
 要するに、習近平に対して、金融担当や商業担当の人々が、自分が処罰されることを恐れて事実を隠し、粉飾をすることになる。当然にその粉飾に合わせて、各省、そして各都市が粉飾をする。例えば習近平や李強が「今年は経済成長率5%」といえば、末端の市政府まですべてが「経済成長率5%」とかく。そのようなことはあり得ないのであるが、ものの見事に5%という数字が重なることになるのである。見事に粉飾であるということは間違いがない。その粉飾の実態は、「より大きなマイナス」になり、また隠したことによってその対処が遅れる。対処の遅れは火事と一緒で、小さいうちにやればすぐに消すことができるが、対処を遅らせて増やしてしまうと、最終的には丸焦げになってしまう。そのような状況であろう。

(2)規模の大きさ
 日本は、幕末に黒船が来てからすぐに欧米に切り替えた。もちろん戊辰戦争の混乱はあったものの、欧米の国々が日本を植民地化するような時間を与えるほどの状況ではなかった。しかし中国の場合は、清国の末期から中華民国になるまで、規模が大きいだけに切り替えがうまくゆかず、その切り替えが完全に終わったのは、1970年代の改革開放経済ではないかといわれている。まさに、規模が大きいので小回りが利かない。そのことが、そのまま傷を大きくすることになる。

(3)国民性
 日本の場合は国民性が高く、すぐに全国民が一致団結して対処し、変わる。また識字率なども高い。しかし中国は民族が多く、文字も文化も違うので、中国全国民が団結することはない。そのことから、中央政府がかえようとしても国全体が変わるまでに壮大な時間がかかる。このように考えてゆくと、日本でいう「失われた30年」よりも大きな経済的なマイナスになる可能性が高い。その場合、国内で生活ができなくなる人が増えて餓死者が出るか、あるいは国が荒廃して内戦が起きるか、あるいは中国政府が他国に戦争を始めるか、いずれかであろう。その場合、「攻めやすい」国に入るので「憲法9条があるから攻めてこない」などというような迷信はあり得ない話になる。
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