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2023-10-08 13:21

ロシアの「強気」に対応できない「平和教育」

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 「日本の平和教育」について考えているが、しかし、そもそも何が平和であるのかということの定義もできていない今の平和教育が、果たして平和を作るのかということから疑問になるものである。「平和教育」などということを簡単に言ってよい状況ではないことは明らかではないか。単純に「争わないこと」ということを教えるのはいくつかの問題点がある。一つには「争いになった場合の対処方法を教えない」ということになってしまう。人間は経験するから、その内容に関して対処をできるのであるから、日本の平和教育では「争いになった時にどのように対処をするか」ということへの「経験」がまったくなくなってしまう。二つ目には「理不尽にがまかり通る」ということになる。まさに、「争う事」でお互いがよくわかる場合がある。「好敵手」などという言葉はまさにそのようなものではないか。しかし、そのこともわからせないで「表面上の平和」だけを教えて何が良いのであろうか。結局、日本の平和教育というのは、最も悪い言い方をすれば「数年で担任を外れる教員にとって、『ことなかれ主義』として自分の評価がつく」という意味で「平和」なのであって、当事者、つまり学校の生徒にとって、子供たちにとって平和ではない。そのことが「いじめに対する対処が何もできない」という現在の教育委員会を生み出しているのであり、同時に、「いじめを学校や教育委員会が隠ぺいする」というような状況になってしまうのではないか。

 なぜこのようなことを書くかといえば、実は、ロシアのウクライナ侵攻に関して、日本の教育界からは全く声が上がらないということである。ロシアのウクライナ侵攻は「あれはいけないこと」というのはよいが、では「どちらが正しい」「間違っている」などという判断を教えたのか、そして「間違っているほうにどのような行動をとるべきか」ということは、しっかりと学校で教育しなくてよいのか。歴史という結果だけで物事を評価してよいものではなく、「今起きている事件にどのように対処するのか」ということが最も大事であるのに、そのことが教えられない日本の教育は、これでよいのか。文部科学省は何をしているのであろうか。さて、突然いじめの話をしたが、まさにロシアがウクライナに侵攻したというのは、漫画ドラえもんでいえば、ジャイアンがのび太をいじめているのとあまり変わらない。その内容は、そのままドラえもんという「NATO」などが、四次元ポケットから様々な武器や兵器を出してのび太に渡しているが、結局誰もジャイアンを止めないという状況に近い。その内容を見て、「ジャイアンは悪くない」というようなことを言い始めたり、中には「ジャイアンとのび太の後ろには、ディープステートという影の政府があるのだ」といってみたりいろいろである。ちなみに、「ディープステート論とドラえもんの例え」にちょっとだけ言及すると(どうでもよい話だが)、漫画ドラえもんに本当に例えてしまうと、未来から来た「せわし君」や、もっと大きなディープステートである「藤子不二雄」がいるというようなことを肯定してしまうような話になってしまうので、これはちょっと面倒な話になる。

 さて、そのような話は別にして、要するに、現在のロシアのウクライナ情勢において、日本は全く有効な手段をとれていない。言葉の上では「ウクライナ頑張れ」などといっているし、義援金や医療器具など様々な物資をウクライナに送っていることを全く評価していないという話ではないし、そのような善意はとても良いことであると思う。しかし、それらはウクライナ国民を助けることにはなるが「争い(戦争)を終わらせること」にはつながらない。とはいえ、「戦わない・争わない」ことしか教えない日本では、武器の禁輸などを言っているので、優秀な「防衛兵器」がありながら、ウクライナ国民を守るための防空システムなどを送ることはできないということになっているのである。このようなことで「本当に平和や戦争を終わらせることを考えているのか」と非難されてしまう状態であろう。まあ、そのような非難をするのも面倒で「あきれて何も言わない」というのが、世界の現状だ。

 それと同じことが国連に対しても言われている。国連は「和平交渉」を早くから取り持とうとして動いていた。しかし、一年半たった国連総会でラブロフ外務大臣は「停戦は実現不能」ということを言い始めたのである。つまり、昨年の2月24日から行った停戦交渉は、すべて無駄であったということになり、そのうえ「嘘の帝国」と揶揄されているのである。結局、「武力のない話し合い」は、国連の場において「戦争を助長する」だけではなく、ロシアとウクライナという関係だけでなく、中国や北朝鮮を交えた「大きな対立」へと発展させてしまっているのである。このような状況を考えて、結局何もできないのが国連ではないか。このような時に、何ができるのか。日本は「本当の平和」を作り出すために、どのように世界に貢献するのか、それとも地球が滅びるというときに、日本だけは戦わないなどといって、世界の人々の命が理不尽に奪われてゆくことを見て見ぬふりをするのか。今まで「平和教育」を言っていた人々こそ、それを強く主導してもらいたいものである。
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