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2007-11-16 22:15

マッカーサーとケナンの対決

奈須田敬  並木書房取締役会長・月刊「ざっくばらん」編集長
 連合国軍の過酷な占領政策は、一言でいえば、日本弱体化計画に基づくものであり、それは日本解体計画に通ずるものであったことは、すでに多くの識者が実証する通りである。卑近な例をあげれば、安倍晋三・前首相が「戦後レジーム(制度)からの脱却」をスローガンに、国の基本問題である憲法・教育・安全保障等の諸分野に、改革のメスを入れ、その緒につきはじめたことでも、判然とするだろう。しかし、普通いわれている日本弱体化、解体化政策に対して、米国の中枢部から、徐々に批判の声があがり、それが大統領の支持を得て、米国の政策となり、占領軍当局に対し是正、改革を迫り、日本の独立・復興・発展の方向へリードしていたことも、また厳然とした事実であることが、当事者の回顧録や証言の中で公開されている。

 その当事者といわれる有力な人達の一人にジョージ・F・ケナン(国務省政策企画室長、駐ソ大使)がいる。ケナンについては、本欄への投稿(3月30日付投稿287号)「新しい視点に立つ『占領研究』を」のケナン・マッカーサー会談の中で、若干触れたが、彼の回顧録(『ジョージ・F・ケナン回顧録(上)』、読売新聞社、1973年)の「日本とマッカーサー」の章で25頁を費やして詳細に論じている。そして、そしてその成果については同書で、次のように自賛しているのは、誇大でもなんでもない事実であろう。ケナンの真情を知り得る重要な記録なので、再録しておく。

《私がマッカーサー元帥を訪ね、会談し、最後にはワシントンから指令が発せられたこと、これらが一体となって、1948年末から1949年初めにかけて行われた占領政策の改革に大きく寄与した。マーシャル・プラン以後私が政治上に果たすことができた最も有意義な、建設的な寄与であったと考えている。これをただ一つの例外として、私はこれまでこのような大きな規模と重要性を持った献策を試みたことはかつてなかった。そして、私の献策がこのように広く、ほとんど完全といえるくらい受けいれられたこともなかった》。

 「第16章 日本とマッカーサー」――被占領下の国民には全く未知な占領軍(マッカーサー総司令部)の内部がいきいきとえがかれている、鋭いドキュメントである。25頁におよぶ長編を断片的に紹介するだけでも容易ではない。しかし対日政策をめぐるマッカーサー司令部対国務省間にわだかまる“いざこざ”を描写した記録は、現在進行中の対テロ戦における米軍・国務省とも無縁ではあるまいし、第二次大戦中の日本の陸海軍省と外務省の間にも、同様な事がくりかえされていたかもしれない。そういった意味で“他山の石”的価値も見出されるのではないか。と強引な理由づけをかってにつけて、やはり、断片的な“つまみぐい”をすることにした。

 マッカーサーという超カリスマを国務省の立場からケナンはどう観察、評価していたか。《困難というのは、司令官は通常二つのシャッポ、すなわち、アメリカのシャッポと国際的なシャッポを冠っていたという事実から由来していた。一方では、司令部はアメリカの命令を実行していた。しかし他方では、彼らは連合国間で結ばれた国際協定の実施者でもあった。一方のシャッポに関連した分野で具合が悪くなると、彼らはすぐにもう一つのシャッポの下に逃げて行った。まるでノミのようなこの機敏さ、自在さが、かれらに、自分の考え方に反するような圧力がワシントンから加えられてきた時に、異常なほどの抵抗を発揮させるのであった》。

 ドイツの場合では、国務省はこの他にロバート・マーフィ大使という「すばらしい経験と判断と名声を持った代表」がいたので、スムーズに連絡がとれたが、日本の場合は、そうはいかないと、ケナンは嘆く。問題は、やはりマッカーサー元帥というカリスマの存在であった。
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