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2007-11-21 07:35

喫煙規制過剰は反民主主義

吉田 康彦  大阪経済法科大学客員教授
 本欄への投稿(11月19日付投稿461号)で大蔵雄之助氏が喫煙の害を強調しておられるが、人間は健康を害するものであっても、生活から断ち切れず、逆にそこに快楽と効用を見出している食品や習慣は枚挙にいとまがない。人間はすべてにおいて合理性を備えているわけではない。タバコは、3000年以上前のマヤ文明が発祥の地とされ、コロンブスの部下が欧州に紹介したのが世界的普及の始まりとされている。喫煙は長い歴史をもつ人類の営みであり、文化なのだ。

 愛煙家は喫煙の害を十分わきまえた上で自己責任でたしなんでいる。社会的に害悪を及ぼすのは非喫煙者の受動吸煙だ。これは喫煙場所の隔離、いわゆる分煙で解決できる問題であり、これを徹底すればよいだけの話で、日本の全国民を禁煙にする必要はさらさらない。最近の日本の禁煙運動も禁煙規制も行過ぎている。十羽一からげの全面禁煙があらゆる場所でわがもの顔でまかり通っている。飛行機内は仕方ないとして、列車内はくつろぎの場でもある。しかるにJR東日本は全車全面禁煙にした。東海道新幹線も喫煙車は一両だけになった。タクシーも各地で全車禁煙になりつつある。せめて選択制にして喫煙車を残すべきだ。

 私はタバコをこよなく愛している。緊張後の一服はストレス解消に役立つ。最近、都内の公民館で講演を依頼され、時間があったので喫煙所をさがしたが、全館禁煙だという。仕方なく玄関先に出てけむりを吐いていたら、管理人が飛んできて玄関も館内だと怒鳴り散らす。そこで一歩出て道端で吸っていたら、今度は条例で路上禁煙だという。世相が禁煙に傾くと、どこもかしこも禁煙にして愛煙家をまるで犯罪者扱いするのが日本社会だ。まさに禁煙ファッショだ。

 私はジュネーブのWHO(世界保健機関)にも勤務したが、世界的な禁煙運動の音頭をとったのは同機関で、2003年に「世界タバコ規制枠組み条約」が採択され、それ以来、日本中どこもかしこも禁煙になったのだが、そのWHOには最高の喫煙コーナーがある。9階建ての本部ビルの屋上が喫煙コーナーで、愛煙家の部長も秘書も、白人も黒人もアジア人も、レマン湖を見下ろし、モンブランを眺めながらスパスパやっている。風雨をしのぐガラス張りの部屋もある。少数者の嗜好と権利を尊重する、これぞ民主主義である。
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