国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2024-06-04 12:48

過剰なインバウンドを考える

船田 元 衆議院議員
 コロナ禍も癒えたと思ったら、訪日外国人の数が急激に増えた感がある。統計を見ると昨年の訪日客は2500万人。今年は3月だけで300万人に達したというから、年間で3000万人に達するのはほぼ確実だ。国別に見ると韓国、台湾、アメリカの順だが、これに中国が加わるともっと数になるだろう。中国からは従来の半分まで回復している。

 この背景には、諸外国でブームとなっている日本の伝統文化やマンガをはじめポップカルチャーに対する憧れ、ヘルシーな日本食への関心、そして何よりも記録的円安が、訪日客の背中を押しているからだろう。確かに訪日客の買い物の意欲は盛んで、経済波及効果は大変大きいが、一方であちこちに問題を発生させていることも事実だ。京都では舞妓さんに所構わずカメラを向けるパパラッチ問題が起こり、富士山とコンビニエンスストアの2ショットを撮るために、交通渋滞が起こり、事故の危険も増しているという。いわゆるオーバーツーリズムという現象だが、最近はその度合いがどんどん高まっている。それぞれ防止対策が打たれはじめているが、なかなか根本的解決には至っていない。
 
 しかしもっと深刻な問題は、観光スポットやその周辺では、インバウンドの好みに合わせた店舗や商店街が誕生しつつあることだ。特にアジア系、東南アジア系のインバウンド向けに、派手な色彩の看板が乱立したり、建物すら彼らの好むものに建て替えられたりしている。昔からある日本の落ち着いた老舗や家屋が壊され、無国籍の派手な建物が林立する姿は、全く馴染めない。外国人から見て有力な観光スポットを昔ながらに保つには、もっと日本のあちこちで、インバウンドを分散して受け入れる努力が求められる。例えばクルーズ船で日本各地の港を巡ったり、あまり知られていない地方の伝統文化やお祭りを、テーマごとに回遊させるなど、いくらでも方法はある。インバウンドをおらが町に呼び込むためのアイデアを競い合うことも、地域の活性化につながるはずだ。
 
 オーバーツーリズムを放置しておくと、地元の人々の生活を脅かすばかりでなく、日本の原風景や落ち着いた街並みが壊れてしまいかねない。訪日外国人の数をただ増やすのではなく、秩序ある受け入れ態勢を整え、地域の活性化に結びつくイベントやストーリーを工夫するなど、観光庁や各自治体にはもっと努力してもらわなければならない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム