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2024-08-05 22:54

カマラ・ハリス待望論の裏側で囁かれている不安

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 アメリカ大統領選挙は、民主党のカマラ・ハリス副大統領の人気が急上昇ということで、民主党側はお祭り騒ぎになっており、共和党とドナルド・トランプ陣営が守勢に回っているという報道がなされている。私は、激戦州、特にウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルヴァニア州の状況を見ていて、トランプ前大統領が有利と見ている。トランプがペンシルヴァニア州を取れば選挙戦はトランプ勝利で終わるだろうと見ている。
 
 カマラ・ハリスはカリフォルニア州でキャリアを重ね、連邦上院議員になって4年、副大統領になって3年半ほどである。国政でのキャリアは短い。バイデンは大統領になる前には、連邦上院議員を36年、副大統領を8年務め、大統領になった。ワシントン政治の大ヴェテランで賛否両論あるが、その点は評価すべきだ。バイデンはペンシルヴァニア州の出身で、隣のデラウェア州を拠点にしてきたので、五大湖周辺の激戦州での人脈が広い。ハリスは、五大湖周辺州での人脈がほぼない状況であり、ここの有権者たちにしてみれば、「カマラってどんな人なの?」ということになる。残り100日余りで、どこまで浸透できるかは不透明である。また、五大湖周辺の激戦州(工業中心、働き者の白人労働者、敬虔なキリスト教徒が多い)と、進歩主義的なカリフォルニア州では文化が違いすぎる。ハリスは自身を進歩主義派とは規定していないだろうが、激戦州の人々から見れば、十分に「過度なリベラル派で進歩主義派」ということになる。トランプに投票した、白人労働者階級の人々が、賢二上がりで進歩主義派のカマラ・ハリスを高く評価するとは考えにくい。
 
 更に言えば、民主党内で、ハリスをどこまで支援するのかという問題も残っている。ジョー・バイデン政権内で、バイデン派とハリス派の軋轢があったということが報じられている。バイデン派からすれば、ハリスの政治家としての能力が低く、上院議員時代も、2020年のアメリカ大統領選挙に出馬して早々に撤退した時も、事務所や陣営の運営がうまくいかなかったが、副大統領になってもやっぱりうまくやれていないという不満があったようだ。

 また、2020年のアメリカ大統領選挙の民主党予備選挙で、ハリスがバイデンを厳しく批判し続けたことをバイデン派は忘れておらず、ジル・バイデン夫人は、ハリスを副大統領候補にすることに不満を持っていたとも言われている。今回のバイデン降ろしは、バイデン支持派にしてみれば宮廷クーデターに等しく、ハリスを全力で支持することは難しいだろう。そもそもハリスは厳しい選挙で勝った経験がなく、民主党エスタブリッシュメント派の覚えがめでたいというだけでここまで来ている。そのことに、民主党支持者の中にも不満がある。だから、8月19日からの民主党全国大会でデモを計画しているグループが複数ある。選挙戦について、じっくりと冷静に見ていくことが必要だ。
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