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2025-02-13 10:12

暴走するトランプにブレーキをかけるのは・・日欧の協力

舛添 要一 国際政治学者
 ドナルド・トランプ大統領の暴言・暴走が止まらない。グリーンランドをアメリカ領にする、パナマ運河の管理権をアメリカが取り戻す、「メキシコ湾」の名称を「アメリカ湾」にする、など言いたい放題である。関税を武器にした戦いも始めた。 トランプの発言の背景にあるのは、これからの世界をめぐる覇権争いである。とりわけ、中国との熾烈な争いが問題であり、世界中で米中間の陣取り合戦が繰り広げられている。グリーンランドについては、トランプは、その周辺で中国やロシアが活動を活発化させていると述べ、国家安全保障上、アメリカが所有する必要があると強調した。地球温暖化は国際政治にも様々な問題を投げかけているが、北極海の氷が溶けて、砕氷船でなくても航行可能になってきている。そのため、北極海航路の重要性が増している。そして、その航路の真ん中にあるグリーンランドの戦略的価値が高まっている。

 さらに、地球温暖化によって、凍土が緩み、レアアースなどの地下資源の採掘も可能になっており、注目されている。中国やロシアの触手が伸びていることを、トランプは懸念している。グリーンランドは、1953年までデンマークの植民地であったが、1979年に自治領となり、グリーンランド議会と住民投票の決定によって、独立することが可能となっている。そこで、独立した後のグリーンランドと協議する道もトランプは考えているようである。パナマ運河は、1900年代初頭にアメリカが建設し、1977年まで管理権を所有していた。その後、カーター政権下で、管理権がパナマに移行され始め、1999年に移行が完了した。トランプによれば、パナマ運河が中国に運営されている、運河を通航するアメリカの船舶に過剰な通航料を請求しているという。香港を拠点とするCKハチソン・ホールディングスは、運河の入り口の二つの港を管理しているので、トランプは、それを念頭に置いているのだろうが、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、「中国は全く干渉していない」と反論している。
 
 さらに、トランプは、カナダを51番目の州としてアメリカに編入することや、メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称することも提唱した。トルドー辞任表明を受けて、トランプは、「カナダの人の多くは51番目の州になることを大いに歓迎している。アメリカはもはやカナダを維持させるために必要な巨額の貿易赤字と補助金に苦しむことはできない。トルドー氏はそれを理解しているから、辞任するのだ」とSNSに投稿し、カナダがアメリカに編入されれば、関税は無くなると強調した。メキシコのシェインバウム大統領は、17世紀の古地図では、今のアメリカが「アメリカ・メヒカーナ(メキシコのアメリカ)」と表記されていると述べ、北米を「メキシカン・アメリカ」と呼ぼうかと皮肉った。
 
 このようなトランプに対して、自由な先進民主主義国はどのように対応するのか。基本は、ヨーロッパと日本の連携である。日本としても、アメリカ製品が輸入できないときに、ヨーロッパ製品を使うという選択肢がある。たとえば、旅客機で、アメリカのボーイングが駄目なら、ヨーロッパのエアバスがある。アメリカの原発が駄目なら、フランスの原発がある。このように、ヨーロッパという選択肢があることは、日本の国益にかなう。次世代の戦闘機は、日本、イギリス、イタリアで共同開発しているが、それも好ましい事例である。日本とヨーロッパが連携すれば、G7の中で多数派である。トランプ政権のようにアメリカ第一主義を推進する政権と対峙するには、日欧の緊密な協力が不可欠である。
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