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2025-03-16 17:11

「日米共同防衛」容認せぬ共産党の危険な安保論

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 周知のとおり、日本共産党は「日米安保廃棄」を主張している。党綱領四では「日米安保」を廃棄し日米友好条約を締結すると規定している。その理由は、「日米安保」は米国の世界戦略の一環であり、日本を守るものではないからという。その根底には共産党の「反米反戦」のイデオロギーがある。具体的には、「在日米軍は、海兵遠征軍・空母打撃群・遠征打撃群・航空宇宙遠征軍という四つの殴り込み部隊で構成されており、いずれの部隊にも日本防衛の任務はない」(「赤旗」2024年5月7日)と主張する。
 
 しかし、安保条約5条には「各締約国(日米)は、日本国の施政権下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくすることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って、共通の危険に対処するよう行動することを宣言する。」と規定されている。いわゆる「日米共同防衛」規定である。この規定によれば、日本国の施政権下にある「尖閣諸島」を含む日本の領土・領海・領空が武力攻撃されれば、日米両国による反撃の対象になる。共産党の日米安保は日本を守るものではないとの上記主張は安保条約5条の共同防衛規定と明らかに矛盾する。加えて、今回の石破首相訪米による日米首脳会談の結果、日米の同盟関係と安全保障関係が一段と強化されたから、米国トランプ政権にとって、安保条約5条による「日本防衛」の必要性と重要性が格段に高められたことも明らかである。2025年2月7日の「日米共同声明」には「米国は核を含むあらゆる能力を用いた日本防衛に対するゆるぎない確約を強調した。両首脳は安保条約5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認し、尖閣諸島に対する日本の長期にわたる平穏な施政を損なうあらゆる行為への強い反対を改めて表明した。」と明記された。
 
 「反米反戦」の共産党の「日米安保廃棄」は、安保条約5条の「日米共同防衛」を容認しない。しかし、この規定があるからこそ、中国もロシアも北朝鮮も日本には容易に手を出せないのである。なぜなら、手を出すと安保条約5条により、核戦力を含む世界一の軍事大国である米国との戦争を覚悟しなければならないからである。その意味で、「日米安保」が戦後日本の安全保障にとって最大の「抑止力」であったといっても過言ではない。このように日本の安全保障にとって死活的に重要な「日米安保」をあえて廃棄すると主張するのが共産党である。共産党は「日米安保を廃棄して、東南アジア諸国連合とも協力し、北東アジアに対話の枠組みを作り、日中間の対話を促進し、市民運動をアジア規模で広げる」(「赤旗」2024年5月7日)と主張する。しかし、安保条約を廃棄した日本は米国という強大な同盟国を失って「丸裸」になり、核保有国の中国、ロシア、北朝鮮にとって極めてくみしやすい相手となることは必定であろう。米国による「核抑止力」を失った日本は、これらの核保有国からの恐怖の「核恫喝」にも全く無力となり「核恫喝」にひれ伏し、尖閣諸島の放棄を含む核保有国中国の不当な要求ものまざるを得ないであろう。

 そのうえ共産党は党綱領四で自衛隊まで解消するというのである。まさに、共産党の「日米安保廃棄」は、日米同盟による「抑止力」を失った日本国と日本国民を滅亡の危険に晒すものというほかない。共産党は「日米安保廃棄」により東南アジア諸国連合との協力を強化し、「平和外交」で日本の主権と安全を守る旨主張するが、上記諸国連合が安全保障上、到底「日米同盟」の代替にならないことは明らかである。共産党は意図的に上記諸国連合を過大評価しているのである。なぜなら、フィリピンは上記諸国連合の有力加盟国たる「原加盟国」であるが、南シナ海における国際法無視の軍事大国である中国の力による現状変更を受けたため、改めて米国との個別的防衛協力を余儀なくされたからである。このように、上記諸国連合は軍事大国中国には無力なのであり、これが国際社会の厳しい現実である。したがって、1億2000万国民の生命と安全にかかわる日本の安全保障を到底上記諸国連合などに依存できないことは明らかである。
 
 上記の通り、米国トランプ政権は今回の「日米共同声明」で米国が核を含むあらゆる手段で日本を防衛し、安保条約5条が尖閣諸島に適用されることを明確に確認した。これは対中抑止力として絶大であり、今回の石破外交の最大の成果と言えよう。しかし、「反米反戦」の立場から「日米共同防衛」を容認せず、日米安保条約に反対し廃棄を主張する日本共産党は、米国の「日本防衛」にも反対せざるを得ないであろう。なぜなら、共産党が米国の「日本防衛」に賛成すれば安保条約を認めることになるからである。このような共産党の立場は日本の国益に著しく反することは明らかである。共産党の「日米安保廃棄」で日本は「第2のウクライナ」になる危険性がある。
 
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