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2025-03-28 12:06

オウム事件から30年をつぶさに検証してみては?!

伊藤 洋 山梨大学名誉教授
 3月20日は、あの忌まわしいサリン事件30年目の記念日であった。筆者は、あの日午後一時から、名古屋の某ホテルで開かれる経産省の地域情報化委員会に委員長として参加するために、自家用車で家人同道して朝早く出発した。中央自動車道下り線を岐阜県に入った頃に音低く点けていたNHKラジオが「臨時ニュース」として、都営地下鉄丸ノ内線・千代田線などで傷害事件が発生したという放送の第一報が聞こえてきた。後部座席で寝込んでいる相棒を起こさない程度にラジオのボリュームを上げて待っていると、やがて現場の惨状が次々と続報されるようになり、その惨劇の尋常でない状況が、もはや現場からの実況放送される状態になった頃に名古屋の目的地に着いた。

 午後から始まった会議は、専ら事務局から事件の状況報告が長々と続いて、予定時間を倍以上も経過して終えたのであった。事務局の職員たちは皆、この「会議」が無ければ朝の通勤時刻に現場付近にいたはずだと語り、揃って胸をなでおろしていた。最終回にあたった会議は午後5時から懇親会が開かれたが、東京からの参加者は異口同音に生死を分けた運命の偶然に合点がいかないと口々に語っていたのを、あれから30年の今日、今更のように思い出している。それにしてもこのオウム真理教が起こした一連の事件史、1989年11月には坂本弁護士一家4人殺人事件ではオウム関与が週刊誌などでは書かれていた。これを皮切りに、オウム真理教は常々大衆ジャーナリズムでは話題になっていたし、極めつけは1994年6月の松本サリン事件で「松本市北深志の住宅街で毒ガス(サリン)のため死者7人・重軽傷者660人の惨劇が発生。あろうことか長野県警は第一通報者の河野義行さんに嫌疑を集中させて混迷した。死者8人の中には河野夫人も入っていたのだが、教団に全責任があるとはいえ何とも後味の悪い思いの残った「悲劇」であった。
 
 1994年9月山梨県上九一色村のオウム道場付近で原因不明の樹木枯死が起こり、住民がパニックに陥ったという事件が発生。歴史に「if」は無いとは言うが、この時警察が住民の訴えを謙虚に聞いていればその後のクライマックスへの上り坂を登らずに済んだのに、というのは繰り言に過ぎないか??。遅過ぎはしたもの、明けて1995年1月には警察庁科学警察研究所によるこの場所での土壌検査が実施され、後で判ったことだが、サリン化合物をこの時検出してもいたのである。にも拘らず、95年2月に、世田谷区の公証役場の所長が拉致される事件が起き、オウムの犯行がいよいよ喧伝されるようになっていた、のにだ!なんとも信頼ならない捜査機関の失態であった。トキの警視総監は山梨県出身であったからなお一層悔やまれたものである。

 あれから一世代(30年)が経過した。オウム事件は、この国があらゆる点で停滞期の入り口に入ったときに起きた。そして今もその政治的・経済的・文化的停滞感は継続している。長い長いトンネルの中にいる。かくなる上は、トンネルから無理やりに抜け出そうと焦るのではなく、もう一度この30年をつぶさに検証してみてはどうだろう? 巨大な病巣が見つかるかもしれないから・・・。
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