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2025-04-03 11:09

米国防長官の『日本は西太平洋で最前線に立つ』をどう考えるか

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 就任後初来日した米国トランプ政権のへグセス国防長官は、2025年3月30日、防衛省で行われた日米防衛相会談後の共同記者会見で、いわゆる台湾有事を念頭に『日本は西太平洋で最前線に立つ』と表明した(『赤旗』2025年4月1日)。この表明に対して、同席した日本の中谷元防衛大臣からは特段の異論はなかった。したがって、外交的には日本はこれに同意し承諾したものと見做される。
 
 米国トランプ政権は、周知のとおり『アメリカ第一主義』である。すなわち、外交・防衛・經濟・貿易を含め、アメリカの国益を最大化する諸政策の推進である。そのためには、手段を選ばないのであり、日本、欧州などの同盟国・友好国に対する関税引き上げもその一環であり一切躊躇しない。外交・防衛に関しても同じであり、米国の負担軽減のための、NATO諸国に対する軍事費増額要求、ウクライナに対する軍事支援の縮小停止、在日米軍基地の経費削減、日本に対する防衛費増額要求などもこの流れである。この流れは、軍事紛争への対処にもおよび、米国は直接介入をせずに負担や被害を最小化し、同盟国・友好国を直接介入しない米国の『代理人』として、対ロ、対中、対北朝鮮の軍事紛争に直接介入(「代理戦争」)をさせ、米国の権益や国益の維持増進を図るのが米国の真の狙いと言えよう。このように考えれば、上記の米国防長官の『最前線表明』の本質が理解できるのであり、仮に台湾有事が起これば、直接介入しない米国の『代理人』として、日本を最前線で中国と戦わせるというのが米国トランプ政権の偽らざる本音と言えよう。
 
 しかし、核を持たない日本が、核を持つ中国と互角に戦うことはできない。なぜなら最終的には核攻撃を受ける危険性があるからである。あたかも、核を持たないウクライナが核を持つロシアと互角に戦えないのと同じである。ここに核を持たない日本の宿命的な弱点と限界がある。米国は核保有国との戦争は絶対にしないのであり、このことはウクライナ戦争におけるロシアの「核恫喝」で証明されている。したがって、米国は仮に台湾有事が起こっても台湾防衛のために核保有国の中国と直接戦うことはあり得ないのであり、せいぜいウクライナと同様な台湾への武器援助までである。
 
 日本が上記の弱点や限界があるにもかかわらず、『西太平洋で最前線に立つ』との米国の要請により、直接介入しない米国の『代理人』として台湾防衛のために中国と戦うことは日本にとって最悪の選択であり、日本の国益に反することは明らかである。核を持たない日本は自国の宿命的な弱点と限界を自覚すべきであり、米国の上記要請に応じるべきではない。日本政府は日本の国益を最優先とし、米国と対等平等を貫き、日本の国益に反する米国の要請はこれを断固として拒否すべきである。台湾有事に関しては『米国の参戦無くして日本の参戦無し』が大原則である。
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