国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2025-07-12 10:19

「唯一の被爆国」と核抑止は矛盾しない

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 広島、長崎の被爆者団体や日本共産党などの左翼政党は、日本は「唯一の被爆国」であるから、日本独自の「核保有」はもちろんのこと、米国との「核共有」や米国の「拡大核抑止」すなわち「核の傘」に依存することにも反対する。その理由は、「核保有」のみならず「核共有」や「核の傘」も核の使用を前提とするものであるから核廃絶の理念に反し、日本は「唯一の被爆国」として核兵器廃絶の先頭に立つべきというものである。日本共産党は「核の傘」による核抑止の必要性を否定し「核の傘」を提供する「日米安保条約」の廃棄を主張している。しかし、「日米安保」の廃棄は日本が核に対して無防備になることを意味する。
 
 このような「核抑止」反対論は、理想論ではあっても、核保有国である中国、ロシア、北朝鮮による日本に対する核恫喝や核攻撃の危険性や可能性を無視しており、日本は「唯一の被爆国」であるから、これらの核保有国からの核恫喝や核攻撃を受けることはないと考えている節がある。これは、日本が「唯一の被爆国」であることをあたかも核恫喝や核攻撃を受けないための「特権的地位」であり「免罪符」と理解しているとも言えるのであり、極めて危険である。なぜなら、ひたすら力を信奉する上記の核保有国が、日本が「唯一の被爆国」であるがゆえに、核恫喝や核攻撃を加えない保証はないからである。このことは、1994年の米ロを含む「ブタペスト覚書」により核を放棄し、核抑止力を失い、核に対して無防備となったウクライナに対する核保有国ロシアの侵略を見ても明らかである。
 
 このように考えると、「唯一の被爆国」と核抑止は矛盾しないどころか、「唯一の被爆国」だからこそ、二度と被爆しないために、日本は核に対して無防備となってはならず、日米同盟に基づく「核抑止」の確保が必要不可欠であることが分かる。米国の「核の傘」だけでは核抑止として不十分であるとすれば、米国との「核共有」も真剣に検討すべきである。「核共有」は米国の核兵器を日本国内の基地に配備せず、米原子力潜水艦発射型の「核共有」も可能であり有効である。「核抑止」が戦後米ソの戦争を抑止し、現在も米、ロ、中の戦争を抑止していることは否定できない厳然たる事実である。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム