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2025-07-28 08:54

関税15%合意は成功だ

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 石破首相は7月23日、日米関税交渉が合意したと発表した。合意内容は、米側は25%と宣言していた日本に対する相互関税を15%に引き下げる、日本車への関税も15%とする、日本は米国産のコメ輸入量を最低輸入量の枠内で増やす、日本企業の対米投資を80兆円規模に増やす、鉄鋼・アルミニウムに対する関税50%は対象外、というものである。

 「アメリカ・ファースト」を標榜するトランプ政権による関税引き上げの波は、日本のみならず、英国、フランス、ドイツなどのEU諸国や、北米カナダ、南米ブラジル、中国、韓国、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどの東南アジア諸国にも及んでいる。トランプ政権による関税引き上げの目的は、関税引き上げによる米国の慢性的な巨額貿易赤字体質の改善と、衰退した米国の鉄鋼、造船、機械、自動車など製造業の国際競争力の回復、雇用の拡大にあると言えよう。

 今回の関税15%合意については様々な評価がある。15%でも高い、80兆円の投資による利益の90%を米側が取得するのは不当である、合意文書が無い、などの批判がある。関税15%合意については、英国の10%以外では、ベトナム20%、フィリピン19%、インドネシア19%であり、これらの諸国と比較すれば、日本の15%は高いとは言えない。貿易を含めビジネスの世界では、買い手が売り手よりも有利なのであり、関税においても同じである。
 
 対米投資80兆円の利益の90%を米側が取得することについては、赤沢担当大臣は7月26日のNHK番組で、「投資80兆円には出資・融資・融資保証の枠があり、出資による利益の90%を米側が取得するが、98%以上が融資と融資保証であり、出資は2%以内であるから出資による利益の90%でも数百億円に過ぎない。」と述べた。融資の利息については言及はないが、融資の性質上、利息は日本の政府系金融機関及び民間金融機関が取得するであろう。合意文書が無いとの点については、合意文書の有無にかかわらず、日米関税交渉の結果を受けた、7月22日トランプ大統領による「史上最大の貿易合意に署名した」(産経新聞7月24日)とのホワイトハウス演説により、関税15%合意は有効に成立した。日米両政府には関税15%合意を裏付ける大量の合意関連文書及び記録が保存されているであろう。

 今回の関税15%の合意については、日本の経済界は歓迎している。合意により企業活動に対する不透明感が払拭されたからである。その証拠に7月24日の東京株式市場は、トヨタ、マツダ、ホンダ、三菱自動車をはじめとする輸出関連株を中心に暴騰し、日経平均株価は1396円高の全面高になった。翌7月25日の日経平均株価も655円高となり、一時4万2000円を超え史上最高値を更新した。株価は正直であり、関税15%合意を高く評価しているのである。関税15%合意は成功と言えよう。
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