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2026-02-01 12:10

日本国を滅ぼす「専守防衛」

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 「専守防衛」とは、侵攻してきた敵を自国の領域内で軍事力をもって撃退する受動的な防衛戦略であり、長年、日本の安全保障上の基本方針とされてきた。しかし、「専守防衛」はまさに「本土決戦」であり国土が戦場になるため、人的物的被害が甚大である。そのため、「専守防衛」ではなく、自国の領域外で軍事力をもって敵を撃退することが、世界的な共通の認識である。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に、日本では「専守防衛」だけで果たして日本国民を守れるのかが安全保障上の重要課題となった。

 ロシアによる国際法違反の侵攻を受けたウクライナは、米国をはじめNATO諸国の軍事支援もあって一時は善戦したが、反転攻勢は所期の目的を達せず、戦況はウクライナにとって厳しい状況である。欧米諸国の「支援疲れ」もあり、さらに戦争が長期化すれば、最悪の場合は軍事大国であるロシアによる首都キエフ陥落も否定できない状況と言えよう。この4年「専守防衛」により専ら国土を戦場として対ロシア防衛戦争を余儀なくされたウクライナ側の人的物的被害は甚大であり、兵士や一般市民を含む多数の犠牲者を出し、国民の徴兵逃れなど、国民の疲弊はもはや限界に近づいていると言えよう。

 ウクライナの悲惨はまさに「専守防衛」の悲惨である。ウクライナ側の「専守防衛」により侵攻したロシアは自国領土への反撃がないため、際限なくウクライナへの武力攻撃が可能である。すなわち、ロシアにとっては、自国領土への有効な反撃がないため、首都キエフを含むウクライナ全土を完全に制圧するまで武力攻撃の継続が可能なのである。これが「専守防衛」の冷厳な現実である。日本も「専守防衛」を堅持する限り有事の際はこのような現実を覚悟しなければならないのである。

 このようにウクライナの教訓は、第一に「専守防衛」では全く戦争抑止力にはならず、国民を守れないということである。第二に他国からの軍事支援だけでは国民を守れず、自国の防衛力の強化が不可欠だということである。第一の教訓からは、日本の場合は、中ロ北朝鮮のミサイル技術が発達しミサイル防衛が困難な現状では、抑止力を強化するために「専守防衛」を超える相手国領土への反撃能力の保有が不可欠であることがわかる。そのためには相手国のミサイル発射基地などをたたく長射程ミサイル兵器の開発保有が必須である。射程3000キロ以上の地対地、地対空、空対地、艦対空の極超音速弾道ミサイルや巡航ミサイル、長距離戦闘爆撃機、長射程ドローン兵器などの大量保有が求められる。第二の教訓からは、「核抑止」の面で日米同盟は極めて重要ではあるが、日本独自の防衛力・抑止力の強化も不可欠であることがわかる。上記の長射程ミサイル兵器や長距離戦闘爆撃機の大量保有のほか、超高性能レーダー網構築、軍事偵察衛星増強、無人偵察攻撃機大量保有、宇宙空間防衛体制強化、電磁パルス兵器保有などの最先端兵器の大量保有が求められる。

 日本が反撃能力を保有し実際に相手国に反撃すると、相手国に核攻撃の口実を与え、かえって危険であるから「専守防衛」を堅持すべきとの一部軍事専門家や学者などの反撃能力保有反対論がある(東京新聞2022年11月26日)。しかし、この反対論は、ウクライナとは異なり、日米同盟の「核抑止力」を無視ないし軽視するものである。在日米軍基地を含む日本への核を含む武力攻撃は、日米両国の平和と安全を危うくする武力攻撃事態として、核を含め日米安保条約5条に基づく「共同防衛」並びに安保法制に基づく「集団的自衛権」が発動される公算が大きい。このことを中国・ロシア・北朝鮮は熟知しているからこそ、核攻撃を含めこれらの国からの日本に対する一切の武力攻撃が抑止されているのが現実である。反撃能力保有を含む日本の防衛力・抑止力の強化はこのような核を含む日米共同防衛体制を一層盤石なものとするものに他ならない。「反撃能力保有反対論」すなわち「専守防衛」絶対論者は、このような現実を無視し、ウクライナの教訓を学ばず、日本をウクライナと同様の甚大な人的物的被害をもたらす「専守防衛」の悲惨、すなわち「本土決戦」の悲惨に陥らせるものであり、日本の安全保障上極めて危険であり論外である。一切の反撃能力を保有しない「専守防衛」の絶対化は日本国を滅ぼす危険性がある。
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