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2007-12-20 21:02

連載投稿(2)占領地域に忍び込む「親ソ的な幻影」

奈須田敬  並木書房取締役会長・月刊「ざっくばらん」編集長
 ケナンの頭の中には、すでに第二次世界大戦の末期、ナチス・ドイツの崩壊前後といった方が適切であろう時期に、戦勝気分横溢の連合国内部に亀裂が入っていたことも見抜いていた。「米ソ冷戦」がそれぞれの占領地域内で発生しつつあった。

 「この二つの国―――マッカーサー元帥が最高の指揮権をもつ日本と、西ドイツのアメリカ占領地域―――では、アメリカ政府が全責任を負っていた。われわれは自らこの責任を引き受けたのであった。われわれは無条件降伏を要求し、それを自分の手に受け取った。それは独裁的な権力を要求し、受け取るに等しいことであった。(中略)われわれが国際関係を持っていた他の地域とはことなり、これら両国では、われわれが何らかの目的を達成するために、脅したり、すかしたり、あるいは口をすっぱくして説いたりしなければならないような、現地の独裁政権とのにらみ合いなどはなかった。それはテーブルに出されたご馳走みたいなもので、切ってたべさえすればよかった」。

 この一節を読む限り、ケナンの占領論は無条件降伏国に対しては、いかなる苛酷な政策も許されると、誤解されそうだが、それにつづくケナンの意見を深読みすれば、問題点は別にあることがわかる。「しかしながら、1947年には、国務省の立場から見ると、ある種の不安が、いつとはなしに忍び込んでいた。(中略)第一に、この両地域は、その重要性と我々の統制力から見て、世界政治のチェス盤上では、われわれの側の一番重要な駒には相違なかったが、実際は国務省にいるわれわれで動かすことができず、大統領ですら不完全な権限しか持っていないような駒であった。この両国にいるアメリカの司令官は、実際には、高度に独立性を持った地位に就いていた」。

 ワシントンの支配力が制限されていることに加えて、占領軍の政策を注意して見ていくと、かれらは、「国際的な指令、あるいは一国の指令のいずれにせよ、発せられた指令の性格」に不安があった、とケナンは次のように指摘する。「これらの指令は、その大部分が戦争の最終段階で決められていたものである。それらは、多くの点で、見せかけの寛大さ、福音主義的自由主義、独善的な懲罪主義、親ソ的な幻影、そしてすでに周知のように、戦時中連合諸国の政策に浸透していた大国間協力という根拠のない願望の戦後版、そういったものへ愛着を反映したものであった」と。上記の「親ソ的な幻影」が、ケナン説のカナメであり、やがて猛威を振うことになった。(おわり)
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