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2008-01-09 14:34

クリントン逆転勝利に女性同情票

杉浦正章  政治評論家
 米国の世論調査と政治専門家がこれほど予想を間違えたことはあるまい。ニューハンプシャー州の民主党予備選挙である。世論調査ではオバマ上院議員がクリントン上院議員を二桁のリード、政治専門家もほとんどがオバマ氏勝利を前日まで予測。アイオワに次いで連敗すれば後がないと言われていたクリントン氏が劇的なカムバックをした背景は、どこにあるのだろうか。CNN,BBC放送などによると、女性票の掘り起こしに成功したとの見方が強い。女性票はクリントン氏が47%獲得したのに対し、オバマ氏は34%にとどまった。加えて労組票をクリントンが10%リードしており、これが決め手となったようだ。

 なぜ逆転するほどの女性票を獲得できたかだが、クリントン氏はこれまでターゲットを中高年の女性に絞ってきたが、加えて25歳から35歳までの女性層にも対象を広げたという。さらに注目すべき点は〝涙〟の効果である。1968年の大統領予備選において民主党候補マスキー上院議員が涙をこぼした結果、マクガバン候補に敗北。以来「大統領を目指す者は公の場で決して涙を見せてはならない」というのが選挙戦の不文律となった。しかしクリントン議員の前日の〝涙〟は逆に女性層の同情票を買ったというのだ。これはクリントン、オバマ両陣営が指摘しているところだ。ジンクスは破られたわけだ。

 また、オバマ氏が振るわなかった理由について、人種問題の内在を指摘する評論家もいる。アイオワでの勝利を目の当たりにして、これでは黒人大統領が本当に実現してしまうという懸念が一挙に広がったというのである。こうした総合的な要因の作用だろうが、これでネバダ、サウスカロライナ州など今後の展開は一挙に予断を許せなくなった。

 圧倒的な資金量を背景にクリントン陣営が更に勝利を重ねるか、オバマ氏がまたまた巻き返すか、民主党予備選挙は目が離せない。両候補の対日政策が気になるところだが、クリントン氏は「中国との関係は米国でもっとも大切な二国間関係」と、日本無視の発言をしている。しかし、これはむしろ外交上の拙さの表れだろう。オバマ氏は、対日政策について、日本の「普通の国」への脱皮を歓迎しながらも、韓国や中国など周辺国との歴史問題で「誠実な対応」を要求、第二次大戦中の従軍慰安婦問題などを重視する姿勢を明らかにしている。もっとも、これも国内向けの色彩が濃厚だ。対日政策についてはまだ未知の分野が大きいが、オバマ氏の方がきめ細かいような気がする。
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