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2008-02-05 13:40

“鹿を逐う”中国のシーパワー

秋元一峰  海洋問題研究者・元海将補
 2007年4月から、「中国海軍が空母を保有する日を考えよう」(投稿302号)、「再び、中国海軍が空母を保有する日を考えよう」(投稿340号)、「三度、中国海軍が空母を保有する日を考える」(投稿376号)、「とうとう大西洋にまで乗り出した中国海軍艦艇」(投稿429号)、「着々と進む中国海軍の『外洋海軍』化」(投稿473号)と、中国海軍の拡張を危惧する拙文を連続して投稿してきた。今回から、「“鹿を逐う”中国のシーパワー」と題して引続き警鐘を鳴らしていきたい。なお、“鹿を逐う”は故事「中原に鹿を逐う」の如く覇権を求める中国のシーパワーを表現している。

 2007年12月13日、米国下院軍事委員会でラヘッド海軍作戦部長が「米国の造船能力は著しく低下しているが、中国の造船業は世界市場で高い競争力を持っており、世界一の韓国を追い抜くのも遠くない」旨を証言した。米国共和党が提出した資料によれば、2007年における商船の建造は中国が約5,000隻で米国は約300隻、潜水艦建造は中国が3隻で米国は1隻、鉄鋼生産は中国が米国の約5倍であった。共和党のハンター議員は「中国が商船建造を海軍艦艇建造に振り替えれば、米国を凌駕する海軍力を建造できる」と指摘している。

 昨年暮れに示されたこの危惧は、年が明けて現実のものとなった。1月12日、ロンドンにある世界最大のシップブローカーであるClarkson Plcが、「2007年、中国は1億360万DWTの新規受注があり、9,480万DWTの韓国を抜いて世界一の造船大国となった」と発表した。もっとも、そこには数字のマジックがあって、別のトン数換算によれば依然として韓国の方が大きいとの見方もあるが、それでも、世界のナンバー・ツーであることは間違いない。

 上記記事の2日後の1月14日、キーティング米太平洋軍司令官が北京を訪問した。人民解放軍の陳炳徳総参謀長はキーティング司令官との会見で、「中国軍と米軍との能力差は大きく、米軍を脅かすほどの力はない」と述べている。キーティング司令官は記者会見で、「中国側は、覇権的意図も拡張主義的戦略も持っておらず、平和的台頭であると主張したが、中国側の主張に完全に同意はできない」とし、軍事力増強の理由についての透明性の促進の必要性を強調した。

 上記記事の3日後の1月18日、米紙ワシントン・タイムズが、「中国は原潜にASAT(対衛星攻撃)ミサイルを搭載する秘密裏の計画を進めており、米国防省当局が懸念を強めている」とし、「中国海軍の晋級原潜のミサイルにASAT弾頭を装着するとの情報があり、最近訪中した米軍高官が会談の議題とすることを要望したが、中国側に拒否された」と報道した。中国では昨年、対衛星ミサイルの発射実験をしている。まさに、透明性が求められるところである。どのような社会にも階級は存在する。トップの類型を覇者と王者に区分するなら、中国の階級を支配してきたのは、常に覇者であったように思う。シーパワーは繁栄の基礎であって、覇権であってはならないのだが、日本が知らぬ間に、海洋は「三国志」の世界になっている。
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