国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-03-18 12:55

朝日・読売が米軍事力の必要性で意見一致か?

杉浦正章  政治評論家
 朝日と読売がイラク戦争5年目の評価をめぐって社説で激突している。これだけならニュース性に乏しいが、驚いたことに、北朝鮮の核問題を抱える日本にとって米国の軍事プレゼンスの衰退が好ましくないという点では完全に一致している。読売は当然として、朝日が「米国の消耗が心配」とは、猫がワンと鳴いたほど面白い。

 最初に口火を切ったのは読売だ。3月16日の社説で「イラク戦争を大義なき戦争とする批判がある。だが、開戦に至るまでの長い前段を忘れては、問題の本質を見誤る」と強調、「当時の状況では、米英が武力行使に踏み切り、日本がそれを支持したのは、やむを得ない選択だったと言える」と言い切った。おそらく朝日が社説を書くだろうと予想して先制攻撃をしたのだろう。勢い余って「開戦後、イラクは化学兵器を使うな、といった社説を掲げた有力紙もあった」と暗に朝日も大量破壊兵器はあるとの判断だった事を指摘した。確かに朝日は2003年3月19日付の社説で「大量破壊兵器の問題の根源はフセイン氏にある。彼への支持は国際社会にはない」とも言い切っている。これは当時大量破壊兵器の存在が疑われていなかったことを物語っている。

 朝日は今日18日の社説で「この歴史的な大失敗をまだ正当化しようとする人々がいる」と冒頭から切り返して「戦争を支持した日本にもその責任の一端があるはずだ」と断定した。 朝日と読売の論調には相容れない対立がみられる。ところがイラク戦争の長期化によって米国の衰退を懸念しているところでは奇妙な一致を見せている。読売は「米国の力の低下が心配だ」とする理由について「米国がイラク情勢に足をとられ、東アジアでの影響力が減退していく状況は、日本として看過できない。米国の軍事力を背景にした圧力が、北朝鮮に核廃棄の決断を迫る重要なテコとなる。米国の力が弱まれば、北朝鮮は核廃棄に動くわけがない」と北の核対策の見地からの懸念を述べている。

 これに対して朝日も中見出しに「米国の消耗が心配だ」と取ったうえで、「心配なのは、イラクの収拾が長引くほどに米国自身が消耗していくことだ。軍事力だけではない。経済力や外交力、ソフトパワーを含めて、世界を引っ張る米国の指導力が失われていく。北朝鮮の核問題を抱える日本にとっても、唯一の同盟国である米国の衰えは好ましくない」と軍事力を含めた米国のプレゼンスの衰退を懸念した。朝日、読売の論調が北の核の脅威に対する米国の軍事力の必要で完全に一致したことになる。読売の主張はまさに持論だが、朝日は社説でも記事でも基地問題や、米軍事力配備の問題、米国の核抑止力の問題などで、ことごとく米国の軍事プレゼンスに批判的な論調を貫いてきたはずだと思ってきたが、これは私の錯覚だったのか? 「唯一の同盟国である米国」という表現にもびっくりした。びっくりする方が遅れているのか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム