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2008-04-08 14:35

対「北」経済制裁は続けるべきだ

李相哲  大学・教授
 まもなく4月13日に期限切れとなる、北朝鮮に対する経済制裁を延長することにしたのは、正しい判断である。さらに言えば、仮に米朝協議で北朝鮮がある程度の譲歩をしたとしても、日本は制裁を解除すべきではない。その理由をあげよう。

(1)アジアの大国として、正しいことは、毅然とした態度でやり遂げるという姿勢を見せる必要がある。「北」の本質は何一つ変わってはいない。最近は、住民に対する引き締めをさらに強化、公開処刑も増えているという。つまり、すべての住民を敵にまわしても、どんな酷い手段を用いても、一部の特権階級の既得権益を守るためには、人を殺し、核兵器も手ばなさないという態度である。人権や世界平和などは、尊重するどころか、概念すら「北」には存在しない。「北」という存在がアジアや世界平和にどれほどの障害になっているかは、ここで説明するまでもない。今までもそうだったが、これからもしばらくは、人類の平和を脅かし続けるだろう。それに怯んではだめだ。「北」は、時にはずる賢い子供のように、時にはヤクザのように、振る舞っている。日本は、「北」に対し、拉致だけを問題にするのではなく、このような人権や人間の基本権利を蹂躙する価値観をこそ問題にし、このような価値観の下で好き勝手に振る舞う北朝鮮政府に断固反対するというメッセージを送り続けるべきだ。ただ、日本だけが制裁を続けることで、日本だけが国際的に孤立するのではないだろうか、という専門家もいるだろうが、まったく逆である。日本が断固態度を変えないことで、その交渉力が高まるのである。

(2)「北」は国家として機能しているのではなく、ある特殊な人間たちが、不法な手段をもって営んでいるだけであり、合法的な国家でもなんでもない。つねに、不法集団とみなして、交渉に臨むべきである。「北」は、国家として相手にすべきものではない。ボスの気持ち次第では、すべての約束を反故にすることも、破棄することもできる集団である。朝鮮戦争時の「北」とソ連のやり取り、その後の中国との関係、韓国との関係において、約束を履行した前例はむしろ少ない。「北」の約束は、その場しのぎの騙しの手段にすぎない。金正日はロシアを汽車で旅行したとき、ロシア側警護員たちに、一人につき1500ドルのチップを渡そうとしたが、警護員たちが断ったという逸話を、同行していたロシア側の高官がある本で紹介しているのを読んだことがある。北朝鮮政府を取り仕切っている金総書記は、この程度の人物である。2000万の面倒は見れないし、考えた事もないが、自分に敬意をはらう人間には「親切」にもチップを惜しまない。国家元首として相手にすべき人物ではない。彼に振り回されてはならない。「北」の体制を変えるという行動に出るつもりがなければ、すくなくとも「北」の体制が変わるまで交渉相手にすべきではない。それで孤立するなら、それを甘受し、じっと待つべきである。交渉する場合でも、国家を相手に交渉する態度で臨むべきではない。

(3)「北」から条件を提示して来て、行動によって本当にその条件を満たしたとき、日本は初めて制裁解除の話に応じるべきだ。「北」はアメリカと仲良くなった振りをし、中国にねだり、韓国を脅迫して、日本との間に溝をつくるつもりでいるが、その戦術に巻き込まれてはならない。日本は絶対にぶれてはならない。北朝鮮や世界の動きにまどわされて、短絡的な決断をすべきではない。「北」はいつかは、一部の特異集団の手からはなれ、大多数の北朝鮮の人々の国になるはずである。いま一部の上層部の集団の得になること、彼らが望むことをすべきではない。10年、場合によってはさらに長いスパンで北朝鮮政策を考えるべきだ。「北」が本当に国家としての体面を整えた時点で交渉しても遅くない。結論から言えば、日本は平和と人権、尊い価値を尊重する国として、目先の国際情勢やその流れに流されるべきではない。毅然とした態度で、正義を貫くという姿勢と自信をもって、対処すべきである。経済的な原因で制裁を解除するなら、それはもっと良くない。絶対ぶれてはならない。
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