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2008-04-23 08:04

未曾有の攻防段階に入る政局を展望する

杉浦正章  政治評論家
 4月30日のガソリン法案再可決後の1か月半は、首相・福田康夫が中央突破か、解散か、総辞職か、を問われる場面に遭遇する、大波乱の図式となるだろう。何でもありの流れの中で、総辞職の可能性は否定できないが、首相・福田康夫は「サミットがある」を念仏のように唱え続け、まず辞めないだろう。自民党が地滑り的大敗に直結する解散は、恐らくない。一番の可能性は、与野党双方がぼろぼろになって、通常国会閉幕というところ、あたりで落ちではないか。らくだを針の穴に通すほど難しい政局展望だが、あえてシミュレーションしてみた。

 政府・与党は、4月27日の山口2区補選の勝敗にかかわらず、ガソリン税などの暫定税率を元に戻すため再可決の既定方針を貫き、民主党が問責決議を可決しても無視する構えだ。幹事長・伊吹文明も「小沢さんの手にだけは、絶対に乗らない」と断言している。解散についても「サミットという国際的な大行事があり、その前に選挙なんてない」と否定している。解散・総選挙に踏み切れば、政権が交代する可能性が強く、福田としては、サミット目前の首相の座は、何が何でも死守しようとするだろう。政局を揺るがす大波は、現在予想されるだけでも、4月30日のガソリン法案再可決、5月12日以降の道路整備財源特例法案再可決に加え、会期末6月15日ごろと、3回は、政権を襲う。

 まず山口2区補選は、自民党が勝てば4月30日に問題なく再可決。民主党が勝って、一部マスコミが騒いでも、自民党は同日の再可決に踏み切る。これを受けて民主党が首相問責決議案提出に踏み切るかどうかだが、民主党が補選に負ければ微妙だ。提出しにくい雰囲気になろう。勝てば鬼の首を取ったように提出に走るだろう。問責決議が可決された場合、政府・与党はこれを無視するか、解散するか、総辞職するか、の判断を迫られる。世論がどう動くかだが、読売、産経、日経などは再可決支持を鮮明にさせており、「解散せよ」とは書かないだろう。世論は無視派と解散派に割れるかもしれない。これは首相にとって無視の選択ができるチャンスとなろう。問責には法的根拠もない。直後から国会は空転段階に突入する。

 次に、首相の道路財源一般財源化と矛盾していると指摘されている、道路整備法案の再可決問題が連休明け5月12日に浮上する。自民党若手には異論もあるが、政府・与党は予算上の整合性を維持するため、まさに“毒食えば、皿まで”の構えで、これを再可決するだろう。矛盾は承知の強行だが、恐らく与野党の妥協ができない限り、再可決しか道はない。これにより与野党の対決は、抜き差しならぬ段階に突入する。世論の動きも「解散か、総辞職」を求める声が台頭する可能性がある。会期末までの1か月は最も攻防が激化するだろう。このまま空転させてよいのかについて、民主党も責任を問われる。まさに食うか、食われるかの1か月となろう。

 最後の山は会期末に来る。6月15日の会期末までに衆院再可決が可能となる政府提出法案は、税制関連法案を含め14本ある。これらを3分の2で3度目の再可決するかどうかだ。さらなる重要法案可決のため、1-2週間の会期延長があるかもしれないが、これも情勢次第。福田としては、衆参ねじれ国会がもたらす未曾有の政局に直面するわけである。最後は、首相の胆力と気力にかかっている。福田には年金未納問題で官房長官をあっさりと辞任した経緯があり、野党マスコミの攻撃に耐えられなくなったり、嫌気が差したりした場合、政権を投げ出す可能性も否定できない。しかし今は、解散も総辞職もしないし、する気もないだろうから、防空ずきんをかぶって塹壕(ざんごう)に入り、時々顔を出して撃つしかない。
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