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2008-04-28 08:00

福田総裁での総選挙指揮は無理

杉浦正章  政治評論家
 山口補選での自民党大敗が中長期の政局に影響を与えるのは、不可避の形勢である。首相・福田康夫の責任は重く、自民党内では「福田では選挙を戦えない」とする声が巻き起こるだろう。“サミット花道論”が勢いを増すかも知れない。実際に福田では能力的に自民党総裁として総選挙を担当することは無理かも知れない。後期高齢者医療制度の問題は、総選挙で自民党に地滑り的な敗北をもたらす、と何度も指摘しているが、補選の結果はこれを立証した。各種出口調査でも、同制度を選択のポイントとして挙げた有権者が最も多かった。これは福田のピント外れの選挙戦略に起因しているところが大きい。

 自民党は、「年金・医療」は不利と見て、当初地域問題を争点に掲げたが、福田が応援に行って、わざわざ高齢者医療問題を取り上げ、「少しぐらい負担してくれてもいいではないか」と発言した。首相は、基本的に「制度は説明不足」という認識だが、有権者の認識は制度撤回にあるところに、気がつかない。これが敗北の最大の原因だ。保守バネの根幹であった高齢者の支持を一挙に失った。一種の地殻変動だ。接戦なら、補選を政局への影響に直結させるべきではないが、2万票の大差がつけば別だ。補選大敗が政局にもたらす結果だが、まず第一に今国会での解散・総選挙はますます遠のいた。現時点で選挙をすれば、何度も言うが地滑り的な自民党敗北は間違いない。解散総選挙は早くてサミット後、本命は秋の臨時国会だ。

 次に、自民党内で「選挙の顔」としての首相不信の動きが台頭することは間違いない。公明党の幹事長・北側一雄は「福田首相では選挙ができない、というのは短絡的な考え」と首相支持の考えを表明したが、自民党議員にしてみれば、他党の幹事長の支持など何の役にも立たない。自分の選挙に直結する問題である。福田の「選挙の顔」としての不適格性は、かねてからの問題であり、補選でこれが決定的となったのである。ここまで来ると、サミット花道論が台頭してもおかしくない情勢だ。サミット後に首相を差し替え、総選挙体制を整えようとする動きが、生ずる可能性が高い。福田は、通常国会後なんとしてでも内閣改造を断行、態勢を建て直そうとするだろうが、その力が残っていれば可能だが、どうか。終盤国会の荒波を乗り越えれば一層ぼろぼろになることは目に見えている。

 民主党など野党は、補選での勝利を総選挙につなげようとするのが常識であり、最大の争点を高齢者医療制度に置くだろう。自民党政権は、誰が担当していても同制度への対応を迫られる。換骨奪胎した制度見直しか、制度撤回をしない限り、総選挙に勝つのは容易ではない。撤回すれば、内閣の責任問題となるのは不可避だし、撤回しなければ、総選挙に勝てない。自民党政権は進退きわまってきた感じだ。自民党にとってベストの選択は、国民的人気の高い候補に首相を交代させ、高齢者医療制度を撤廃し、総選挙に臨むことだ。これしか“死地”からの脱出は不可能だろう。
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