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2008-05-09 08:50

「ポスト福田」へ自民胎動

杉浦正章  政治評論家
 中国主席・胡錦涛がまだ滞在中だというのに、永田町では明らかに「ポスト福田」を模索する動きが始まっている。一番動きが目立つのは前官房長官・与謝野馨だ。与謝野の会合では出席者から総裁選出馬の場合支持するとの声が出るなど本格的な動きだ。元首相・小泉純一郎の動きも微妙だ。つられて元防衛相・小池百合子まで頑張りだした。前幹事長・麻生太郎は自重しているが、おそらく我慢できなくなってくるだろう。ポスト福田の候補として上げられるのは他薦、自薦も含めて麻生、与謝野、小泉、政調会長・谷垣禎一、小池らだが、歯ごたえのある本命筋は、麻生、与謝野、小泉だろう。

 このうち、要所要所で首相・福田康夫に適切なアドバイスをしてきた与謝野は、なぜか4月の自民・民主両党党首討論以来がらりと態度を変えた。同月13日の民放番組で党首討論を「レベルが低い。両方とも」と言い切った。福田を見放したともとれる発言だ。総裁候補の必需品である著書も出版した。「堂々たる政治」と銘打ち、まるで「政権公約」とも受け取れる内容だ。8日も衆院議員・後藤田正純が仲介して前高知県知事・橋本大二郎らと会談したが、この席で政調会長代理・園田博之が「次期衆院選は福田康夫首相の下では戦えない」と述べ、与謝野支持を鮮明にさせたという。党内政局も通常ここまで来ると“多数派工作のはしり”的になる。与謝野は一昨年に咽頭がんの手術をしており、現在でも発言がつらそうだが、政局判断、政策への切り込みの良さは、定評がある。しかしこれまで無派閥で、山本勘助的な軍師役の力は発揮してきたが、全軍を統括できるかどうかは未知数だ。このままでは“やせ馬の先走り”となり、党内から足を引っ張る動きが出るだろう。

 これに対して前回総裁選に出馬した麻生太郎は、派手に動きを表面化させていない。「ポスト安倍」で福田に“あぶらげ”をさらわれて懲りたのだろう。しかし派閥勢力は着々と増やしており、麻生派も20人までに拡大している。「“隠れ麻生派”を含めれば倍はある」(同派幹部)とみられている。「右往左往しない」と現在は自重しているが、しょせん禅譲などは期待できまい。政権は戦い取るしかないが、その時期を見極めているのだろう。こういう政局場面では、一人が動くと、つられるものである。我慢できなくなって、やがて動き出すだろう。国民的人気がいまだに衰えない小泉純一郎も、“血が騒ぐ”のか、動きが活発だ。しかし小泉の場合、ポスト福田の候補となることは明確に否定しており、むしろ政界再編を目指している、と言った方が正しいだろう。

 8日夜も若手議員らと会合、政局談義に花を咲かせている。小泉が首相に復帰する目は、政界再編で党首に担ぎ上げられた場合などに、出てくる可能性があるだろう。当面は、この与謝野、麻生、小泉の動きが注目される。前々回の総裁選に出馬した谷垣は、なぜか元気がない。官房長官・町村信孝も動くに動けない立場だ。小池の実態は、泡沫候補だ。政局の現状は、自民党が必ず負ける総選挙の負けをいかに少なくするか、の知恵比べでである。焦点はサミット後にも福田の首を差し替え、自民党が新体制で秋にも解散・総選挙に突入するか、それとも福田のままずるずる解散・総選挙を引き延ばして、任期満了選挙にするか、の二つに一つの選択になりつつある。
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