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2008-05-11 14:14

(連載)北朝鮮への人道支援には条件をつけるべきだ(2)

李相哲  大学教授
 北朝鮮は、韓国新大統領を「逆徒」とよび、「韓国政府が、今の態度のまま、民族(事実上は金正日)を敵にまわせば、破滅を招き、第2次朝鮮戦争さえもあいうる」と、脅迫めいた論調を労働新聞、テレビで連日展開している。では、冷静に見て、今北朝鮮がおかれている国際環境はどうだろうか。幸か不幸か、韓国政府は今のところ慌てて反応していない。日本も、北の食糧危機にはあまり関心を示していない。中国もオリンピック開催準備やチベット問題で、北朝鮮問題を垣間見る余裕は殆どない。ロシアは、新大統領が誕生したばかりだ。外交順位として北朝鮮は、後に回されているだろう。ロシア新大統領は、ビジネスマンであり、所詮、世界最貧国に用などないだろう。

 辛うじて北に関心を示しているのは、アメリカだ。ライス国務長官が近い将来に北朝鮮を訪問するのではないか、というニュースも流れている。昨日、米国務省のソン・キーム課長が、北から1万6000頁におよぶ核関連資料(7箱の分量)を持ち出した。どうせ、紙屑に決まっているだろうが、それをテレビに映せば、ショーとしては効果があろう。もしかしてアメリカが望むのは、根本的な解決ではなく、解決を見せるところにあるのかもしれない。では、日本はどうするか。まず、アメリカの人道支援に待ったをかけるべきである。人道支援だから、食糧が人道に使われるとは限らない。独裁を強化し、長引かせる効果しか生まない。しかし、北の人民が餓死しているではないか、という人もいるだろう。ならば、金正日を責めるべきだ。すくなくとも、「政府の失政で経済が破綻、餓死者が出ている。助けてほしい」と言わせるべきである。「餓死者が出ているというのは、ウソだ」と言いはるなら支援すべきでない。

 次に、金正日を国際裁判に告訴すべきである。国家経済を破綻に導いたこと、300万人におよぶ餓死者を出しながら有効な措置をとっていないという、職務背任の罪で告訴することだ。その他にも、合法的に彼を告訴する手段はありうる。国際秩序を乱した罪、麻薬取引、偽タバコなど、はっきりとした証拠のある犯罪行為や違法取引も多い。それら違法取引に金正日が直接関与しなかったとしても、監督責任がある。最後に、日本がとるべき態度であるが、国際社会から強い要請がある場合にのみ、条件つきで食糧支援をすればよい。北朝鮮から正式要請がある場合のみである。それにも必ず条件をつけなければならない。北朝鮮の官僚は、韓国に対し「食べ物でもって取引しようとするな」と言ったという。裏を返せば、彼らが一番いやな部分は言わないでくれ、ということだ。国際的に「乞食」と呼ばれるのは、そんなに名誉なことではないことくらいは、金正日や北朝鮮の官僚たちも知っているからだろう。(おわり)
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