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2008-05-30 19:55

四川大地震でも簡単には好転しない日中関係

坂本正弘  日本戦略研究フォーラム副理事長
 中国の国際的評価は、オリンピックを前に割れている。世界各地を巡る大規模な松明リレーは、マイナスであった。中国のナショナリズムを鼓舞するには強く働いたが、それは国際的にはむしろ逆効果であった。2008年3月14日付の本欄への投稿(551号)で、アメリカ人に「強い中国と弱い中国のどちらが良いか」と質問したのに対して、多くのアメリカ人が「強い中国はアジアの安定に寄与する」としたことに触れた。しかし、今回のオリンピック事件では、アメリカのみならず世界に展開する中国人が高いナショナリズムを示したことで、各国の警戒心を増したことは明らかである。しかも、中国が並走者を送ったことはその懸念を高めた。

 他方、今回の四川大地震は中国への同情心を高めた。地震の規模の大きさ、死者・被災者の数の大きさは、中国の震災が他の国との比較をこえた規模と深刻さを持つことを示し、中国政府の困難さを浮き彫りにしている。それは、死者の数もさることながら、1千万人を超える被災者の今後の生活、更に1人っ子をなくした親の怒りなどが、今後、大規模暴動に発展する可能性をすら示唆しているからである。

 中国政府が自衛隊機派遣の要請を行った背景であり、今後も、被災者への支援、被災地の復興は極めて困難であり、オリンピックにすら影響がありうる。国際的支援要請も強まろう。但し、冷たく批判すると、2桁を超える軍事費、台湾海峡に展開するミサイル建設への資源を振り向けるべきだろうし、輩出する中国の億万長者の貢献が先であろう。

 日中関係は確かにこのところ好転している。日本の救難隊の受け入れもその現われとも言えるが、この間までの厳しいものから、簡単に変わるとは思えない。中国の対日姿勢は、餃子事件にも示されたが、今回の自衛隊機派遣も中国の世論に配慮して取りやめになった。今回の取りやめには、日本側からの情報の事前漏洩(官房長官をはじめとする)が大きな要因ときくが、日本側の無用心に呆れる。尖閣問題でのとう小平発言への日本側の曖昧さ、中曽根首相の胡総書記への配慮が靖国問題をこじらせた苦い経験を生かし、対中外交には、地震援助でも細心の注意が改めて必要と考える。
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