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2008-06-05 08:31

小沢戦略は事実上の選挙戦突入が狙い

杉浦正章  政治評論家
 参院で首相問責決議が可決され、衆院で内閣信任決議が可決されるのだから、流れはどう見ても「国民の審判」に向かうと思われるがどうか。民主党代表・小沢一郎の解散戦略が着々とその地歩を占めてゆく気配だ。政府・与党は小沢の仕掛けた“蟻地獄”から離脱できるだろうか。民主党が問責決議案提出を断念するという見方はあったが、小沢戦略の本質を見ていない。某通信社に至っては4日の段階で「今国会の首相問責見送り、民主、臨時国会に温存」と報じている。よほどの特ダネなのかと思ったが、大誤報となった。小沢が4月に問責決議案提出を見送った流れを、協調路線への転換と誤判断したのだろう。

 小沢の戦略は一貫している。4月に提出を見送ったのは、長期に国会をストップさせれば世論の矛先が自分に向かうと考えたからにほかならない。小沢の戦略は「早期解散」実現の一点に絞られており、後期高齢者医療制度という願ってもない材料の出現で、決議案提出はますますその可能性を強めていた。加えて、最近では与野党の合意で法案が成立するケースも生じており、このままでは民主党自身が“草刈り場”になるとの懸念も背景にある。引き締めの必要もあるのだ。小沢の戦略は(1)問責決議案を可決させて、通常国会を空転させたまま終える、(2)その結果与野党議員が地元にに帰って是非を訴え、国会の論戦が“選挙区”に持ち込まれる形となり、政局は事実上の選挙戦に突入する、(3)8月下旬に臨時国会が招集されるが「問責を可決された首相」という政治状況をフルに活用して、冒頭から審議拒否を継続、政府・与党を解散に追い込む、というところにある。

 これに対し政府・与党は概して深刻さに欠ける対応である。問責決議は法的拘束力がないから無視することが可能だからであろう。官房長官・町村信孝が「会期も終わり、有終の美を飾りたいということか。ま、どうぞという感じ」と冷笑してコメントすれば、首相・福田康夫にいたっては、またまた失言。「いちいちまじめに対応するものかどうか」である。恐らくなぜ問責されるのかの判断がつかないのだろうが、今回の問責は過去にテロ特措法などで検討されたそれとは違って、より深刻な問題を投げかけることを理解していない。

 それは、後期高齢者医療制度という、戦後まれに見る“失政”に対する問責を意味するということである。高齢者らが雪崩を打って自民党離れしている段階での、問責決議可決は極めて国民に訴求力が強いものになる、ことが分かっていないのである。民主党は衆院にも内閣不信任決議案を提出する。これに対し自民党は衆院では内閣信任決議案を可決させることを検討している。いずれにせよ、衆参両院本会議で首相の信任をめぐる決議の攻防が週明けから展開され、政局は食うか食われるかの段階に突入する。
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