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2008-06-12 08:02

福田政権は片肺低空飛行の段階に

杉浦正章  政治評論家
 問責決議の可決で、政局は新たな局面に突入した。一院が首相を信任しないまま、政権は片肺低空飛行を続けなければならないからだ。解散戦略の側面からみれば、民主党代表・小沢一郎が政権を追い込む“とっかかり”を作る、ことには成功した形だ。しかし解散が本当に実現させられるかは、これからだ。とりわけ後期高齢者医療制度のような“幸運”が、8月招集の臨時国会にかけてほほえみかけ続けるかどうかがカギだ。見所は、小沢が臨時国会冒頭から国会の空転を継続できるかどうかだ。問責決議をめぐる動きを見ていてもどかしいのは、政府・与党スポークスマンの発言である。官房長官・町村信孝も幹事長・伊吹文明も「なぜ問責か分からない」の繰り返し。伊吹に至っては「民主党内政局だ」と、民主党内事情に国民の目を向けようとする。

 両者とも、問責決議の本質を掌握していない。政府・与党は、後期高齢者医療制度の是非で野党の最終的チャレンジを受けたのであり、野党は同制度を“失政”と見て決戦段階に入ったのである。アッパーカットを食らったのだから、防御しつつ、反撃しなければならない場面だが、「分からない」では防戦一方の対応だ。要するに“けんか”のやり方を知らない。しかし、民主党の側も“はやる”あまりに、党首討論という絶好の機会を自ら逃す、という失敗をしている。公開討論が極めて苦手な小沢の意向を反映してのことだろうが、沖縄県議選の与野党逆転という絶好の材料があるのだから、絶好のピーアールに使うべきだった。

 もっとも、決議可決は、7割の国民が後期高齢者医療制度に反対している、という大状況を反映する手段としては成功した。問題は、町村や伊吹が指摘するように、法的拘束力があるかどうかではない。選挙戦で国民の支持を得られるかどうか、が最大のポイントであるからだ。総合判断を下せば政治的には6対4で野党側の勝ちだ。これを裏付けるように、三大紙の12日の論調も、2紙が早期解散論だ。朝日新聞は「首相問責、民意を問う日に備えよ」と見出しにとり「どちらに軍配を上げるのか、総選挙で民意に聞くのが筋だろう」と民意を問うための解散総選挙を主張している。毎日新聞も「今後も堂々と審議をし、解散・総選挙を目指すべきである」と、審議拒否をせずに解散を目指せと強調している。

 一方、読売新聞は、決議を伊吹と同様に、民主党内次元の問題としてとらえ「結局、衆院解散に追い込む効力はないことを承知の上で、対決路線を強調し、国会閉会後も、党内を引き締めていく道具として、問責決議を利用したにすぎないのではないか」と断定している。三大紙は2対1で民意を問うべきだという流れになったわけで、朝日、毎日は、今後この流れを一層強める紙面展開をはかるだろう。小沢戦略は、国会閉幕後も事実上の選挙戦を展開し、臨時国会冒頭から政府・与党への攻勢を強めることになろう。いずれにせよ衆参ねじれ現象の極みと言うべき政局が続く。参院が首相の政治責任を問い続けるという異常な政治情勢である。これを解消するには解散・総選挙で民意を問うのが憲政の常道であろう。
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