国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-06-16 08:03

民主党の虚構を突いた前原発言

杉浦正章  政治評論家
 民主党の副代表前原誠司に対する“いじめ”が公然と行われ始めた。前原が財源無視の同党マニフェストを「無理」と批判したことがきっかけだ。代表・小沢一郎支持グループが“退場勧告”までするに至っている。前原が語った「正論」を無視して、人身攻撃をする。まるでいにしえの社会・共産両党的な体質が姿を変えて現れてきた感じだ。前原の発言は、まさに民主党の最大の虚構を突いている。同党は、参院選マニフェストで(1)国が責任を持って年金を全額支給する、(2)1人月額2万6000円の「子ども手当」を支給する、(3)農業の「戸別所得補償制度」を創設する、ことを約束した。その財源を「税金の無駄遣いをやめることで、15.3兆円かせげる」としている。まさに民放テレビの司会者やコメンテーターらが飛びつきそうな単純明快なキャッチ・フレーズであり、そこが狙いであることは言うまでもない。

 過去半年の国会論議を見ても、すべてがこのトーンで貫かれている。大蔵省出身で財政のプロであるはずの民主党最高顧問・藤井 裕久が、ガソリン税廃止で消える2兆5千億の財源を「節約と、天下りをなくして捻出する」と述べれば、幹事長・鳩山由紀夫は、後期高齢者医療制度廃止法案の財源根拠についてNHKで15日、消費税導入を改めて否定するとともに、「無駄遣いを削る」と繰り返した。要するに、民主党の重要政策は、財源の根拠に乏しい大向こう受けを狙ったばらまき政策にほかならない。15.3兆円もの財源をどう計算して“節約”から捻出するのか、党内きっての“論客”という藤井が理路整然と語る言葉を聞いたことがない。

 前原は、その矛盾を突いた。前原は月刊誌で、農家の戸別所得補償や子ども手当など昨年の参院選のマニフェストについて、(1)行革だけで財源を捻出するのは絶対無理である、(2)このまま民主党が政権を取っても、まともな政権運営はできない、と批判したのだ。まさに正論であり、こういう発言ができる政党なら民主党もほんとうに民主主義を掲げる政党であるはずであった。確かに国民の民主党に対する危惧(きぐ)も、「まともな政権運営」ができるかどうかである。政権を取ってからでは、たちまち矛盾を突かれて、馬脚を現すのが落ちだ。ところが 、この発言を党内政局次元で取り上げ、「封殺」する動きが生じた。筒井信隆「次の内閣」農水担当らは12日「前原副代表の妄言を糾弾し、『退場』を勧告する」と題するメールを同党所属議員に送り「同僚議員や国民に対する重大な背信行為」と決めつけた。

 その背景には、反小沢一郎の立場に立つ前原が、小泉純一郎と会談したり、中川秀直元幹事長提唱のたばこ増税の超党派議連に参加するなど、政界再編含みの動きをしていることへの強いけん制の意味合いがある。その後筒井は、メールが辞任要求ではなく、「進退の勧告は削除したい」と述べたが、弁護士ともあろうものが、感情的すぎる対応であった。小沢一郎に対しては、ひいきの引き倒しになる。民主党は個人の「正論」を党内次元の思惑から封殺してはならない。政権が近づいているからこそ、マス塵(ゴミ)への大受けを狙った無責任な「ばらまき政策」からの脱皮を図るべき時だ。鳩山のように税制論議から逃げてばかりいれば、しょせん化けの皮ははがれるのだ。福祉目的消費税なしの年金改革はあり得ない。消費税にふたをして失敗したのが後期高齢者医療制度だ。総選挙では堂々と消費税を取り上げるべきだ。前原いじめなどでお茶を濁しているときではない。
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム