国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-08-12 12:51

グルジア紛争で問われる国際社会のロシアへの対応

西村 洋治  団体職員
 今朝の新聞報道によると、ロシア軍は紛争対象地域の南オセチアを越えてグルジア本土への攻撃を開始したという。「いよいよ(ロシア流のやり方が)始まったか」という感じで、私はこのニュースを受け取った。ロシアは、グルジアの南オセチア自治州の住民の大半に一方的にロシア国籍を与えておいて、今回のグルジアの南オセチア侵攻は「ロシア国民へのジェノサイドだ」と言っているという。その上で、停戦の条件としてグルジアのサーカシビリ政権の退場(ということは、ロシア傀儡政権の登場)を要求しているとも言われる。

 これはまさにロシアがチェチェン民族に対してつけた言いがかりと同じではないか。それでも、チェチェン問題はロシアの国内問題と言えなくもなかったが、グルジアはれっきとした外国である。さらに言えば、ソ連時代のロシアが、そして帝政時代のロシアがコーカサス諸国や中央アジア諸国につぎつぎと突きつけた言いがかり(それはもっと露骨で一方的な言いがかりであったが)をも想起させる。当時は、コーカサスや中央アジアは文明世界の視野の外にあり、ロシアのやりたい放題に「待った」をかける意志も能力も国際社会にはなかった。しかし、今度はどうなのだろうか。

 ロシアも、グルジアも、国連加盟国である。すべての国連加盟国は「その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、慎まなければならない」との義務を負っている(国連憲章2条4項)。この国際社会の規律が守られなかったのが原因で、第二次世界大戦が戦われた。冷戦終焉後この規律を最初に破ったのは、イラクのクウェート侵攻であったが、国際社会はサダム・フセインのこの暴挙を許しはしなかった。ロシアは、自分の今やっていることの意味を分かっているのであろうか。国際社会全体(そして日本)は、ロシアのこの野蛮を看過したり、座視したりすれば、それが人類史の到達した文明にどのような破壊的な結果をもたらすかを熟慮すべきである。国際社会は、他人事としてではなく、わが身の問題として、このロシアの「犯罪」に対処しなければならない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム