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2008-08-20 07:59

「福田・麻生密約説」の“噴飯度”

杉浦正章  政治評論家
 永田町にまことしやかに流れている「福田・麻生禅譲密約説」ほど噴飯ものの話はない。首相・福田康夫が麻生太郎との会談で、「自らの手で解散はしない」と選挙前に麻生太郎に政権を禅譲する約束をしたというものだ。古来禅譲密約説は譲る側に政局を動かす力があって流されるものだが、低空飛行を続けている福田にその力はないし、本人もさらさらその気はないだろう。あくまで週刊誌レベルの話だ。
 
 噴飯ものの第一の理由は、密約説が1日の福田・麻生会談直後に流されたことだ。サシの会談で出た話、それも本物なら福田も麻生も外に漏らすだろうか。麻生はこんな話を聞いたら絶対に漏らさない。漏らしたら壊れる事は必至だからだ。福田サイドも自ら自分の不利になる話を漏らすはずがない。“密約”だからこそ効果があるのである。話の構図もおかしい。「選挙の前に政権を譲る」というほど、福田が追い込まれているとすれば、そもそも麻生を取り込んで政権浮揚をはかる改造をする必要もない。即退陣を決意しているはずである。端的に言えば総選挙のための改造人事なのである。

 「首相が退陣しないといけないときには禅譲する力はない。首相が力を維持したら禅譲することはないから、禅譲は不可能だ」元幹事長・加藤紘一が述べているのは正論だ。禅譲するには、それを行うだけのパワーが必要だ。古来禅譲の密約は、政権に就く側がナンバー2にしばらく待って欲しいという意味で行われている。「吉田・鳩山禅譲密約」も「岸・大野禅譲密約」も「福田・大平密約」もすべてがそうだ。総裁が幹事長に就任依頼するに当たって禅譲を約束するなどと言うことは政治力学から言っても荒唐無稽のたぐいだ。それに密約はたとえあっても実現したためしはない。「吉田・鳩山」のケースは抗争がかえって激化している。「岸・大野」も証文まで交わしながら政権は池田勇人に渡った。「福田・大平2年交代密約」も結局総裁選挙にもつれ込んだ。政界の密約はたとえ存在する場合でも実現しないのである。麻生の場合も次を狙う候補ではあるが、次を狙えるのはあくまで福田と協力関係を貫いた上の話であろう。
 
 麻生側も下手な仕掛けをすれば火の粉は自分に降りかかってくる。ここは幹事長として自らの政治生命を賭けた選挙戦に臨まざるを得ない構図だ。総選挙を前に内部抗争となれば国民の自民党に対するひんしゅくは頂点に達するだろう。元幹事長・山崎拓は「衆院選前に党総裁選を行い、一時的な“劇場型政治”でリーダーを代えて自民党に風が来るかと言えば、そういう状況ではない」とのべており、これがまっとうな政局の読みだ。
 
 元首相・森喜朗が民放番組で「次は麻生君」と述べたが、これほどの空手形も珍しい。選挙に負ければ政権は代わるのである。次はない。森も軽くなったものだ。政権は戦い取るものであり、禅譲密約などは真夏の怪談話の幽霊のようにつかみ所がないのである。ただ一つ可能性があるのが、福田が安倍晋三と同じで政権の重圧に耐えられなくなって投げ出したケースだ。これは禅譲密約とは別の話であり、麻生政権の可能性は残る。
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