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2008-09-12 07:56

次期総選挙の焦点は、自公過半数の可否

杉浦正章  政治評論家
 太筆書きで今の政局を読むと、福田辞任発言前は民主党圧勝ムードだった総選挙の流れを“麻生効果”でどこまで挽回できるかだ。自民党単独で衆院過半数の241議席に達するか、それができなければ公明党と合わせて過半数に達するかだ。いずれもできなければ政権は民主党に渡る。予想される衆院選挙までの2か月間が勝負だ。麻生太郎の人気をみると、小沢一郎の「誰が総裁になろうとも、何も変わらない」という発言が、引かれ者の小唄のように聞こえてくる。12日付けの全国紙の調査でも上昇傾向が続いている。読売新聞の調査では、麻生を選んだ人が59%(前回30・6%)に上り、小沢の28%(9・6%)の倍の勢い。朝日新聞も麻生42%(30%)と上がっている。

 失言癖のある麻生が大失言でもしない限り、上昇は続くとみられる。もともと小沢は国民的人気がない。先の参院選挙は小沢の人気でなく、年金問題という紛れもない“敵失”で勝ったのである。自民党はこの“麻生効果”の上に乗って、「小沢一郎に勝つ戦い」(麻生)を展開するしかない状況だ。麻生に国民の目を引きつけたうえで、民主党のアキレスけんを突いていく。ほかの候補では聞く耳持たぬ国民も、麻生が財源欠如の小沢政権構想やインド洋での給油問題での無責任さを批判すれば、耳を傾けるのである。この勢いを背景に総選挙になだれ込むしか、自民党の選択肢はないといってよい。加えて麻生が自民党にとって最大のアキレスけんである後期高齢者医療制度の凍結でも表明すれば、ますますプラスの作用を及ぼすだろう。

 自民党代議士が危機感を持つ最大のポイントの一つが、同制度で離れた高齢者票が戻らないことである。「今回だけは、民主党の投票させてもらう」という意固地なまでの自民党離れだ。加えて消えた年金問題、物価高騰などへの不満は強く、官僚の驚くべき無能さ、腐敗、規律のたるみも争点だ。新たに事故米不正販売問題での政府の責任問題も浮上している。民主党にしてみれば、これらの問題を突くことにより、自民党に戻ろうとしている票を取り戻すしかあるまい。しかし、時の経過は問題を2番せんじ、3番せんじ化しており、麻生効果の“新鮮さ”にこれだけで対応できるかどうかだ。要するに、民主党は過去1年間ため込んだ“敵失効果”を“麻生効果”に蚕食され始めているのだ。

 実際の投票行動に国民がどう出るかだが、読売と朝日では調査結果が真っ向から割れている。比例選での投票政党は、読売が自民39%、民主33%で自民党リードだが、朝日は民主32%、自民28%と逆転している。現段階ではとても勝敗を予測できる情勢にないが、焦点は自民党が単独で過半数かどうか、公明との連立で過半数かどうかにある。衆院で過半数を維持すれば、参院で民主党にくさびを打ち込むことが可能になる。当分政権交代がないと見れば、参院民主党の分断、切り取りが可能になるからだ。ただ福田辞任発言前に言われていたような自民党100議席減というドラスチックな流れだけは、断ち切られたのだろう。このように政局は自民党総裁戦後の衆院選挙にむけて、食うか食われるかのデッドヒートが展開される流れだ。焦点は“過半数”にかかっている。
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