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2008-09-17 07:43

与野党は「政局優先」をやめ、経済危機に対応せよ

杉浦正章  政治評論家
 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)による金融危機が、国内政治の展開に影響を生じさせ始めている。自民党総裁選挙は「お祭り騒ぎをやっているときではない」(民主党幹事長・鳩山由紀夫)とのけん制にあって、動きをそがれている。政局優先で後回しにされそうな、緊急景気対策のための補正予算案の早期成立も、不可避の課題となって浮上してこよう。ここは与野党党首会談で補正を成立させてからの解散、つまり話し合い解散が必要な状況となったのではないか。米国の金融危機は厳しい局面を迎えており、米保険最大手AIGの経営不安説まで流れている。金融恐慌の崖っぷちにあるという認識が正しい。福田首相は連日閣僚会議を緊急招集するなど事態への対応に躍起となっている。

 こうした中で自民党総裁選候補の経済財政担当相・与謝野馨は、岡山市内での17日夕の街頭演説参加を見送った。民主党代表代行の菅直人が「政府・与党は世界的な危機への対応がまったくなされていない。まさに責任放棄の状況だ」と批判するほど、政府は無策ではないが、事態は今後の解散・総選挙戦略に影響が出て来そうな状況だ。これまで「麻生戦略」は、臨時国会で所信表明演説を済ませた後、代表質問をして解散断行、という解散へのもっとも短い日程を考えていた。しかし金融危機という事態は、麻生太郎自身が16日「大手証券破たんの影響は極めて大きい。今は景気対策が短期的に必要だ」と財政出動による景気浮揚策が急務との立場を鮮明にさせた事が物語るように、日本経済に深刻な影響を発生させかねない状況だ。

 そこで問題になるのが、緊急事態が発生したのに「政局優先」でよいのかということだ。与野党の政治の姿勢が問われる重要問題をが顕在化したのだ。そこで当面の問題となるのが、総合経済対策に伴う2008年度補正予算案だ。歳出規模は全体で約1兆8100億円で、今月下旬に開会予定の臨時国会提出に向けた作業が進められている。その成立を待たずに、解散で2か月の政治空白を作ってよいのか、ということだ。歳出規模も、場合によっては金融危機の度合いに合わせた拡大修正が必要になるかもしれない。この政治状況は、代表質問直後に解散はせずに、少なくとも数日をかけて補正予算案の審議を行い、成立させた上での解散が必要になってきたことを示唆している。この点、与謝野も「解散は補正成立後にすべきだろう」と述べている。

こうした中で日本の政治に必要なのは、与野党党首が話し合って解散時期を決める「話し合い解散」である。民主党首脳にも話し合い解散が必要とする意見は以前からあり、国会対策委員長・山岡賢次が、16日「我々は何でも反対ではない。以前から話し合い解散に応じると言っている。党首会談にも応じる」と述べたことも、注目に値する。この際与野党、とりわけ自民党と民主党は、自民党総裁選挙の決着が付いた後で、麻生と民主党代表・小沢一郎が会談し、補正予算を成立させた上での解散で合意するべきだろう。同予算を新たな金融危機対応型に修正することも視野に入れることはもちろん、民主党に前向きの修正要求があれば、取り入れてもいいではないか。国民生活に直結する緊急事態の中で、与野党とも党利党略、政局優先で対応すべきではない。話し合いが成立すれば、遅れても10月解散、11月9日投開票の日程は可能ではないか。国民優先の政治なら、話し合い解散しかない。新聞の論説も早くこの点に気づくべきだ。
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