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2008-11-10 11:45

日豪安全保障協力強化の展望

石原 雄介  大学院生
 このところ日豪間で、安全保障協力の制度化が着実に進んでいる。2008年を振り返ってみても、いくつかの画期的な進展が見られた。まず、日豪が主催する「核軍縮・不拡散に関する国際会議(ICNND)」が設置されたことだ。今年の前半にラッド首相が訪日した際、当時の福田首相との間で設置が合意され、この10月に初会合が持たれた。共同議長は毎回元豪外相ギャレス・エバンズ氏と元外相川口順子衆議院議員が務めることとなっている。この会議の実際上の意義については今後の進展を見守ることにしたいが、日豪が政府レベルでこのような国際会議を制度化したことをまずは高く評価したい。

 また、今年、我が国は、「ソロモン諸島の国家再建事業(RMASI)」について、その民生分野での人的貢献を行うことを表明した。南太平洋地域では、不安定な社会・経済構造をもつ多くの島嶼国が相次ぐクーデターや暴動に苦しんでいる。オーストラリアはこの10年来、同地域の安定化のために外交・軍事・ODAといったあらゆるパイプを通じて関与を拡大してきた。RMASIはそのような取り組みの一つである。南太平洋は我が国とオーストラリアを結ぶ資源輸送ルート上にあり、また各種国際機関の投票では南太平洋諸国が無視できない票田であることから、日本の南太平洋への関与拡大は、そのまま日本の国益に通じるといえる。

 このように具体的な協力が進みつつある日豪関係だが問題がないわけではない。なかでも大きな課題は、日豪が「東アジア共同体」構築に向けての具体的な戦略を共有できていないことであろう。「東アジア共同体」を論じる際、ASEANプラス3と東アジア・サミットを念頭に、“開かれた地域”にむけて日豪が協力すべきだと唱える人は多い。しかし、いかにして“開かれた地域”を実現していくかという具体的な方法論に話が移れば、日豪政府も含め、詰められたロードマップを示せる人は少ないのではないだろうか。私としては“開かれた地域”を実現するためには地域統合の「目的」と「手段」をたくみに使い分け、プレイヤーとしてどの国をいかに取り込むかの戦略が重要と考える。

 いわゆる“開かれた地域”を意識した「東アジア共同体」論では豪州の参入について「民主主義」などの理念上の結びつきを重視する傾向が顕著である。たしかにそれも大事ではあるが、上記のように日豪が安全保障の利害を共有している以上、それを踏まえた地域統合論は十分に可能である。たとえば日豪が「プライム・ムーバー」となって、南太平洋の安全保障協力を進展させ、その後、中国、韓国、ニュージーランド、シンガポールなどの関係諸国を参入させることが考えられる。このような協力の輪を拡大することによって、“開かれた地域”を実質化させることができるからである。要は、豪州を地域統合に不可欠なプレイヤーとして定着させることが先決なのではないだろうか。
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