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2008-11-14 11:18

(連載)ユビキタス社会における利用者の福利(2)

森 浩晴  団体職員・大学講師
 過当な市場競争は、ともすれば「安かろう悪かろう」を招きます。ただ、安ければ良いという市場も無論あります。しかし、私どもの生活に直結したライフラインを「質は保証しないが、ともかく安い」というだけの理由だけですべて市場原理に委ねることには大いに戸惑いを覚えます。今の私どもの生活にとって、電気通信事業は正にライフラインそのものであります。 これが滞りますと、日常生活に支障が起きる訳であります。

 また、先述(2)の電気通信事業者の立場ですと、法的に(3)の政府から免許業等の諸規制があるのでしょうが、「市場原理=営利最優先」となる筈です。東京や大阪や名古屋都市圏だけで事業(新規建設~維持管理)を行い、人口密度の希薄な地域への事業展開は敬遠するのが、「企業行動の理」となります。当然、居所によって、公共サービスの「格差」が出てくる訳です。

 経済学的にも「受益者負担原則」はあります。たとえ、サービスを享受出来ても、都市圏と地方で「料金負担」に当然の様に差が生じる次第です。つまり、電気通信事業は、(1)→公共サービスである以上、利用者としては、居所や居住条件等に関わらず全国一律に同等サービスを享受したい、(2)→民間事業者である以上、利益を上げて株主還元せねば背任的立場になる、(3)→権利調整をすべき立場の政府は、(1)と(2)のバランスの上に立っているのです。

 この様に非常に微妙な権衡に立っている電気通信事業を、ただ「競争」の原理原則で追い立てることには、私としては慎重な考えを抱かざるを得ません。私ども利用者が願っているのは、闇雲に安い料金ではありません。ともかく、朝起きて、蛇口をひねれば「安心」な水を頂くことが出来るように、電源を入れれば「安心」して通信サービスを受けることができる「保証」を求めているのであります。これこそが、我が国大多数の「利用者利便」であると信じて止みません。(おわり)
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