国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-11-17 10:36

(連載)あるアラブ人がオバマを支持する理由(2)

本条 有樹  研究員
 悲しいかな、我々アラブ人は、人種主義の典型です。湾岸域の外国人(労働者)をごらんなさい。彼等には何の権利もありません。彼等の声をきいてごらんなさい。一部屋に20人押しこまれているが、個室とは言わない。せめて10人一部屋にして欲しいと言っています。家畜のようにトラックで運搬しないで、バスで輸送して欲しいと言っているのです。我々は人種主義の典型です。オバマはアラブ諸国に必ずや改革を求めるでしょう。まず〝保証人〟制度の廃止です。そしてその次が権利の保障です。黒人だけではなく、アラブ人自身そして白人にも権利を認めなければなりません。アラブ世界では白人が侮辱されています。〝神聖〟な市民権を持たなければ、侮辱されるのです。オバマにアメリカ・モデルの平等、権利、機会均等の原則導入をアラブ諸国全部に押しつけて貰いたい」

 ここでアトワン発言の引用は終わるが、最後の「オバマにアメリカ・モデルの平等、権利、機会均等の原則導入をアラブ諸国全部に押しつけて貰いたい」という一節は、アトワンが単なる反米・反イスラエルだけの輩ではないことを如実に語っている。私の見るところ、アトワンの思考には独自の「正義」という座標軸がある。その意味で、アトワンはアラブ世界の論理だけに埋没する国粋主義者ではなく、普遍的「正義」に目を向けた国際人である。「正義」にもとる国はどこであれ批判されるべきなのである。「インティファーダ」とは本来アラビア語で「振り払う」や「取り除く」を意味するが、地球上どこの国であれ、そこに「不正義」がある限り、その「不正義」は「取り除かれる」べきなのだ。アトワンにとって「インティファーダ」は世界のどの国でも展開できる運動である。そして、オバマは米国での「インティファーダ」を成功させたのだ。

 欧米人、そして彼らと多くの価値観を共有する日本人は、とかく欧米世界とアラブ・イスラム世界は未来永劫闘いつづける宿命にあると考えがちであるが、アラブ世界にもアトワンのようなアラブ人がいることを知ることは、われわれを未来に向けて勇気づけてくれる発見である。アトワンはアラブ的な旋律で普遍的な「正義」を語っている。しかし彼はアメリカ的な旋律を排除しようとはしていない。むしろその旋律をオバマに高らかに謳わせ、アラブにとくと聴かせるよう要求している。いかなる旋律であれその伝えようとする「正義」は相通じる。アトワンはそう信じて疑わないのだ。オバマ大統領の誕生により、多くの「アトワン主義者」がアラブに現れることに期待したい。そして同時に我々もアラブの旋律に注意深く耳を傾けることが求められている。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム