国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-11-25 13:46

普遍的価値の追求と日本外交の留意すべきこと

角田 勝彦  団体役員・元大使
 本条有樹氏の「あるアラブ人がオバマを支持する理由」と題する本欄への投稿(11月16ー17日付連載)を面白く拝見した。その後杉浦正章氏の「オバマ政権の対日政策を示唆したナイ発言」(11月19日付)及び鍋嶋敬三氏の「日本は『オバマの変革』に目覚めよ」(11月19日付)も拝読し、米国からの新たな息吹きに対応する日本外交のあり方について改めて考えた。

 「オバマにアメリカ・モデルの平等、権利、機会均等の原則導入をアラブ諸国全部に押しつけて貰いたい」。本条有樹氏が引用したアラブ人ジャーナリスト・アトワン氏の発言である。この発言に見るように、ブッシュ政権の失敗にかかわらず、米国が掲げる普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)への評価は高い。またオバマ選出は、米国の民主主義が健在であることを立証し、米国の政治的威信をかなり回復させた。なお金融危機後市場経済への批判があるが、独占禁止法が百年前から存在していることが示すように、規制は非市場経済化を意味するものではない。

 アジア的人権とか中東型民主主義などというものはない。多文化主義と言うが、普遍的価値、とくに基本的人権を認めない文化は衰退しよう。宗教については、政教分離しかない。筆者は「『普遍的価値を重視する日本』を世界に認識させよ」と題する投稿(2007年6月11日)で、「日本がたとえば中国とは全く違う国であることを、世界の人々に認識させることがきわめて重要である」旨を述べたが、オバマ後も、これが重要である。

 そこで次に問題になるのが、普遍主義である。素朴に「良いことだから世界に広めるべきだ」と考えやすいのが、米国外交の欠点である。ネオコンの失敗は明らかである。超大国といえども、その力がないことは立証された。治安維持を本質とするテロとの戦いでは、武力は不可欠であるが、国家間の関係では、別の方途もあろう。米国には、国連の外で「民主国家連盟」を結成しようという動きもある(チャールズ・A・クプチャン・ジョージタウン大学教授「民主国家連盟か、中ロを含む大国間協調か:ブッシュ後の世界秩序の試金石」〈『フォーリン・アフェアーズ』誌日本語版2008年11月号〉)。しかしオバマは、少なくともしばらくは協調路線を歩みそうである。日本外交も、日米同盟を堅持するにあたり、先走りしないよう留意すべきだろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム