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2008-11-27 08:04

明日(11月28日)の党首討論を予見する

杉浦 正章  今朝のニュース解説(28日)
 まさか「あぶねぇ、信用できねぇ」と「ちんぴら」の応酬になるとは思えないが、明日11月28日の党首討論は興味深いこと限りない。「失言病」対「政局病」、「軽妙洒脱」対「朴念仁」の決戦だ。焦点は、解散と絡む2次補正の国会提出時期の問題と定額給付金の是非だ。勝負の行方は予断できないが、大局を見れば早期解散への追い込みに小沢は成功しないだろう。従って6対4で首相・麻生太郎の勝ちか。逃げ回っていた党首討論にやっと民主党代表・小沢一郎が応じたのは、紛れもなく新聞、テレビ・メディアが定額給付金や解散先延ばしで、政権批判を高め始めたからだ。この追い風を利用しない手はないと判断したからに過ぎない。小沢は提出時期について「国民に対する大変な背信行為で、裏切り行為だ。首相の言葉が全くウソで、自分の保身でしかなかったことが、国民も分かったのではないか」と勢いづいている。

 当然追及の焦点は、ここに集中するものとみられる。景気対策を急ぐためにも、首相は考え直して、臨時国会に提出せよと迫るわけだ。提出して定額給付金を叩き、解散に追い込むという「何でも政局」の本質を露わにするだろう。これに対して麻生は、年末の中小企業対策は、金融強化法案などに盛り込んでおり、これを人質にとって採決を先延ばしにしておきながら、景気対策はないだろうと応じるだろう。また税収の落ち込みがどの程度か見極め、来年度予算編成との整合性を取って、2次補正を作るにはとても年内は無理との立場だ。双方の主張は全くの平行線を辿るが、メディアの応援を意識して、小沢はかさにかかり、麻生は守りの形となる。提出すれば早期採決に応じるという小沢の発言を「あぶねぇ」とする不信の念が麻生にあるが、無理もない。小沢の来歴をあげつらうまでもなく、小沢の行動はすべてを政局に結びつけており、「信用できない」政治家の筆頭に挙げられるからだ。その証拠には、一時は柔軟姿勢だったテロ対策措置法案、金融強化法案を、解散しないことを理由に人質化している。

 定額給付金についても、新聞各社の世論調査で政策としての評判が悪いことを追及するだろう。「ばらまき」と決めつけるかも知れない。しかし拙稿が度々指摘しているように、国民は給付金そのものへの期待が大きい。政策論と結びつける「虚構の報道」で判断出来ない問題をはらんでいる。その証拠には、産経新聞が11月27日に報道するところによると、ある自民中堅は「地元に戻れば『いつ支給されるのか』と定額給付金の話ばかりだ」と述べているという。民放関係者によれば「ワイドショーで定額給付金を批判すると、『庶民の気持ちが分かるのか』と抗議が殺到する」そうだ。さらに産経は「小渕政権が平成11年に地域振興券の支給に踏み切った際も、メディアは『天下の愚策』と批判したが、10年暮れに20%台だった内閣支持率は半年後に50%台まで回復した。地域振興券の原資は6200億円に過ぎない。2兆円を全世帯に給付すれば、どれほどの効果が表れるのか」と、注目すべき記事を掲載している。

 一部新聞の「政権批判のための世論調査」だけに小沢が乗って、批判を展開すれば、実態論から麻生が巻き返すだろう。党首会談に臨む小沢を“補強”するため、民主党は独自の経済・金融危機対策を打ち出すことを決めた。内容は「子供手当」制度創設や高速道路無料化に加え、道路特定財源の暫定税率の廃止だ。しかしこの政策自体が、矛盾を際だたせている。5兆4000億円もの道路特定財源を廃止して、子供手当などの財源はどうするのかというと、定額給付金で民主党が批判している「埋蔵金」の活用だという。要するに、定額給付金を「ばらまき」と主張するからには、自分の政策の財源なき「大ばらまき」をどう説明するかだ。総じて小沢のポジションは、メディアにだけ乗って、責任政党としての自覚に欠けるのだ。従ってメディアは、党首討論の勝敗で小沢を応援するケースが多いだろうが、実態を分析すると、問題は民主党が責任政党かどうかという原点に戻る。
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