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2008-12-05 07:54

司令塔なき党・内閣運営に揺らぐ政権

杉浦 正章  政治評論家
 首相・麻生太郎自身に起因する問題もさることながら、この政権の最大の欠陥は首相の防波堤となって采配をふるう司令塔が党、内閣に存在しないことだ。いないどころか幹事長が「ポスト麻生」をいの一番に口にするかと思えば、首相秘書官が国会対策をやるような状況だ。したがって麻生が“危険”な首相番記者との質疑応答を延々とやり、自らが外交・内政のスポークスマン役をやっている。最近の政治記事で一番面白いのが、首相と番記者の一問一答。歴代首相には全くなかったほど懇切丁寧に麻生は質問に応じている。したがって細かく分析すれば、首相の心のひだまで読み取れる。

 読者や官邸記者クラブにとってはありがたいことだろうが、政権側にとってこんな危険なことはない。どうしても言葉尻をとらえるのが記者の習性だからだ。だいたいが政権叩きの材料に使われている。本来なら官房長官が応えるべき些細な問題も、いちいち首相が応えている。官房長官・河村建夫は自民党側との根回し役を果たせていない。各省の調整役もいまひとつ冴えない。したがって会期延長問題という政府・与党の最重要課題の与党国対委員長会談に、官房長官や官房副長官でなく首相秘書官・岡本全勝が同席するという事態まで発生する。

 一方で、自民党側の司令塔にも問題がある。幹事長・細田博之が早期解散の風評をばらまいたのは有名だが、今度はポスト麻生の口火を切った形だ。前外相・高村正彦のパーティーで「次に最適なのは高村正彦前外相。バトンタッチしてほしい」と発言した。「この苦境を回復するためには麻生太郎首相は最適な人物だ」と前置きした後の発言だが、時期が時期だけに幹事長が絶対に口にしてはならない発言だ。高村の人物像は定評があるが、とても小泉以来「4人目の首相」になるような状況ではないし、自民党にその時間はない。

 党内的にも司令塔の欠如を指摘する声が強まっている。前幹事長・伊吹文明が「政権には辛抱と心棒がなくなった。内閣の心棒は官房長官、党の心棒は幹事長だ」と批判すれば、前副総裁・山崎拓も「司令塔なき党運営が行われている」と指摘する。民主党代表代行の菅直人までが「まさに運転席に座っている総理がハンドルを離して、助手席や後ろに乗っている与党が右だ左だといって車を揺さぶっている」と揶揄(やゆ)している。だからといって、いまから党役員や閣僚を差し替えることが出来るかというと、敵前の陣形立て直しとなって不可能だ。そもそも幹事長・官房長官人事は、明らかに麻生が司令塔役を求めていない人事であった。麻生が自ら前面に立つつもりの人事だったのだろう。だから大物政治家でなく「文書課長」風の人事となったのだ。その歪みが重く政権にのしかかってきている
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