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2009-01-09 08:05

「喜美の変」は事実上鎮圧された

杉浦正章  政治評論家
 「出る」「出る」と言って出ない元行政改革担当相・渡辺喜美は、倒産寸前のパチンコ屋か。それとも離党してしまっては、何をやっても記事にしてもらえないから、いまのうちに宣伝を出来るだけやっておこうというつもりか。いずれにしても「喜美の変」は、援軍来たらずで、政治的にはつぶされた。問題はなぜ援軍が現れなかったかだが、基本的には、マスコミに踊る議員は仲間から相手にされないということだろう。それにしても渡辺は、8日の朝日新聞の紙面を見て愕然としたことだろう。これまで助け船のように渡辺を“支援”していた記事が、がらりと姿を変えたからである。

 でかでかと「離党宣言、党内そっぽ」とある。朝日は元日の紙面では「政界を大胆に占う」と題してシュミレーションをしているが、その冒頭で「自民党執行部に動揺が走った。霞が関改革を唱える渡辺喜美・元行革担当相に呼応して、すでに数人が離党」との“予測”を立て、以降、同調者などいないにもかかわらず、渡辺の一挙手一投足をはやし立ててきたからだ。朝日が書けば民放が乗る。まるで倒閣前夜の様相と錯覚されそうになるまで無責任に報道され続けた。朝日も、日本のマスコミの本質である「マッチ、ポンプ」の域を出ていないことが証明された。米NYタイムズ、英タイムズなどの高級紙が決してやらない報道ぶりである。要するに渡辺は、このマスコミに踊らされたというか、あい呼応して踊ったというか、その程度の議員であった。

 父上の渡辺美智雄をよく知っているが、似て非なるものを持っていた。鈴木善幸内閣では大蔵大臣に就任し、財政再建に取り組み、自民党内有数の経済通と認められていた。だから細川退陣の際、小沢一郎から首相候補に打診されたのだ。マスコミに踊る議員は、自民党内では実際にはバカにされる傾向がある。テレビに毎日のように“出演”する議員らを思い浮かべると良い。誰ひとりとして、実力者になれそうな者はいない。加えてサンデー・プロジェクトに出席する議員に対し、執行部は発言に注意するよう圧力をかけたり、出席中止を求めたりしている。議員個人にしてみれば、手っ取り早く選挙運動が出来るテレビに出演したいのはやまやまだが、ようやくテレビ・メディアの政治報道の低俗さが分かって来たのかも知れない。

 渡辺は、そのメディアに乗りにのったのだ。本人には「同調者が出る」との判断もあったのだろう。しかし、野党の解散決議に一人賛成して、同調者は去った。自民党内は麻生に不満を持つ空気が濃厚だが、金融危機のさなか重要な予算審議を抱えて、「当面支えるしか方策がない」というのが実情だ。近い将来の政界再編を視野に入れる議員が多いのも確かだ。しかし、渡辺を“先駆け”として尊敬したり、“呼び水”として信頼したりする空気は、ゼロと言ってよい。政界再編や新党に持ち込むには器が小さすぎるのであろう。ここまで来たら離党は秒読み段階だが、いまの状況では離党しても、テレビにちやほやされるのは僅かな期間であろう。すぐに忘れられる。
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