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2009-03-06 08:08
小沢の前の並大抵でないハードル
杉浦正章
政治評論家
民主党代表・小沢一郎の前に横たわるハードルは、並みの政治家ではとても乗り越えることはできまい。東京地検が予定している参考人聴取が一番どぎついが、第一秘書起訴、世論動向、国会喚問などと、次々にクリアしなければならない問題が山積している。小沢の完全否定・全面対決路線も次第に崩れてきている。いったん小沢支持を表明した民主党役員のなかでも、検察批判などに同調できない空気も生じている。民主党も守り切れまい。ハードルの一つ一つを分析してみた。
【第一秘書起訴】拘留期限の24日までには地検が起訴するだろう。そのための逮捕である。次々に出てくる新事実は、いずれも焦点の東北地方の公共工事で、秘書の大久保隆規容疑者が「口利き」した疑いのある方向へと流れている。単なる政治資金規正法違反にとどまらず、あっせん収賄などの刑法犯罪へと発展する流れが生じ始めている。このリークの流れを見ると、ひょっとしたら検察の狙いは秘書ではなく、「本丸」小沢ではないかとすら思えてくる。「全く身に覚えがない」という小沢の主張が覆れば、逆に民主党内の小沢離れの口実となる。民主党内にはそれを待っているかのような空気が出始めている。最高顧問・渡部恒三が「小沢君の記者会見を信頼するしかない」と述べるのも、覆った場合への“布石”があるのだろう。渡部は副代表・岡田克也を買っている。否認を続ける大久保が、起訴事実を認めても、小沢を直撃する。
【小沢参考人聴取】地検が参考人聴取の方針を固めたのは、小沢に直接聴取しなければ分からない問題が多いからだ。例えば記者会見の発言の「秘書から直接話は聞いていない」と言いながら「秘書は適性に処理した」と言う矛盾に始まって、金丸信から受け継いで以来の西松建設との関係、政治団体が西松建設であるとの「認識」があったかどうかなど、聴取すべきことは山積している。法的な問題はないが、問題は「小沢聴取」の活字が新聞に躍ることだ。それだけで民主党の受けるダメージは大きい。
【民主党の小沢離れ】小沢離れは既に始まっている。小沢が地検捜査を「国策捜査」と断定し、全面対決に出たことについて、民主党幹部の中でちゅうちょの声が広がっているのだ。当初は「国策調査の陰謀」と完全同調した幹事長・鳩山由紀夫がトーンダウンさせたのをはじめ、代表代行・菅直人らも検察批判を控える方向に転じた。副代表・前原誠司も検察への直接批判は「一般論としてすべきでない」と述べている。
【世論調査】新聞テレビなどの緊急世論調査が始まっている。情報によるとNHKの場合は6日から8日にかけて行われ、9日(月)にまとまる。首相としてふさわしいかどうかの設問が一番興味深い。1月、2月は小沢がダブルスコアで上回っていた。1月は小沢25%・麻生12%。2月は小沢24%・麻生13%だ。調査の予測をあえてすれば、麻生はそれほど上がらないだろうが、小沢の急落は必至だろう。
【国会証人喚問】共産党が参考人招致か証人喚問を主張しているが、自民党がこのチャンスを見逃すはずがない。元幹事長・山崎拓は「小沢氏が今国会で自ら証人として立って、戦うのが最上の取り組みではないか」と証人喚問の必要を表明している。このようなケースでの喚問は、ロッキード事件における複数喚問の例や、リクルート事件における1989年の中曽根康弘証人喚問の例がある。中曽根は喚問をすり抜けたが、小沢が喚問で記者会見と同様の突っ張りをできるかどうか。喚問での発言は法的証拠能力を持ち、虚偽の証言は偽証罪で訴追される。したがって検察の捜査と即連動する可能性がある。
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