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2009-09-14 07:35
赤字国債か増税しか出口のない鳩山「新首相」
杉浦正章
政治評論家
早くも方向転換して赤字国債を増発するか、消費税の早期導入に踏み切るか、それともマニフェストを反故にするか。今週発足する鳩山由紀夫政権は、“売り”の内政で直ちに“祭のツケ”に直面する。経済・財政状況を分析すれば、民主党政権がいかに厳しい現実に直面しているかが分かる。これまで追い風に乗りにのって「あれもやる、これもやる」と、財源なしの口から出任せ選挙で圧勝したツケだ。財務省当局から説明を聞いた民主党幹部は、恐らく背筋が寒くなっているのだろう。寒くならなければ、よほど鈍感か、無能者だ。今年度から来年度にかけて、法人税や所得税の大幅な減少は避けられない、見通しが強まっている。財務省によると今年度の税収は、当初予算で見込んだ46兆円の達成はとても無理だという。
場合によっては40兆円を割り込む公算が強いようだ。これが何を意味するかというと、今年度と同じ規模で来年度予算を組めば、国債の大幅増発が不可避ということだ。今年度の国債発行額の44兆円を大幅に上回る事になるのだ。しかし国債の発行について、鳩山は「今年度より増やさない。これ以上増やすならば、国家がもたない。減らす努力をしなければならない」と述べて、事実上増発しないことを公約にしている。鳩山は「麻生太郎首相は『財源の裏付けがある』と豪語するが、7、8兆円は赤字国債だ。こんなばかばかしい垂れ流しを安易に打ち出すべきではない」とも付け加えている。これだけの発言をしては、もう後に引けまい。しかし問題は、それが可能かということだ。この不景気の極みの時期に、超緊縮財政に転換して、国民に窮乏政策を強いる覚悟があるのか、と言うことである。失業率も高止まりしている。世界の景気回復基調が政権発足早々に日本だけ崩れかねない状況を招くのは必至だ。
この状況にもかかわらず、民主党は選挙中マニフェストで子供手当、高速道無料化、農家への個別補償、高校授業料無料化などの“大盤振る舞い政策”を次々に打ち出し、この財源を“節約”で捻出(ねんしゅつ)するとしてきた。専門家はだれも、それが可能とは思っていないにもかかわらずである。財務省は民主党の事前聴取に対して、その辺の事情を説明しているのは確かであり、実現するには増税か赤字国債発行しかあるまい。さっそくばらまき政策の矛盾が露呈することになる。加えて来年度予算の年内編成が可能かと言うことである。不可能となれば「民主党政権発の景気底割れ」に直面する。しかし民主党の大方針は既に執行段階に入った補正予算の執行停止であり、来年度予算案の概算要求の白紙撤回、全面的見直しである。財務省筋によると、概算要求を見直せば、作業が1か月以上遅れるという。ということは、補正の執行停止に伴う大混乱と合わせて予算の年内編成が不可能であるどころが、2月以降にずれ込みかねないことを意味している。細川政権崩壊の原因の一つとなったあの悪夢、予算成立の6月以降へのずれ込みが再現しかねない状況なのである。
手っ取り早く言えば、ただでさえ難しいマニフェスト財源7兆円確保に加えて、既に進行中の来年度予算案の概算要求白紙化で時間を取られて、来年度予算案の年内編成が困難となり、新年度4月からの予算執行がずれ込めば、景気と国民生活を犠牲にしかねない状況に既に直面しているのである。解決策としては、鳩山が発言を撤回して、赤字国債発行に踏み切るか、4年間凍結を宣言した消費税導入を早期に行うか、別途所得税や法人税の増税などに踏み切るかである。一番簡単なのは、マニフェストを反故にすることだが、これでは政権の基盤がぐらつく。要するに、批判して当選してきた自民党の政策に「大同小異」の接近をせざるを得ない状況ではないのか。事態は切迫しており、勝利の高揚感に酔いしれている場合ではあるまい。
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