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2009-09-25 19:00
(連載)漂流させてはならない日米同盟関係(1)
矢野 義昭
元自衛隊幹部
国民の圧倒的支持を受けて民主党政権が誕生した。しかし、民主党政権はこれまで、日米同盟関係の基礎となってきた数々の日米合意の見直しにつながるような主張を展開し、マニフェストにも掲げている。米国は当然ながら、民主党政権の安保・外交政策の成り行きに注目しているであろう。日米同盟関係は今、大きな岐路に立っている。
オバマ政権は金融危機対処のため巨額の公的資金を投入し、ヘルスケアなどの内政上の改革も断行しようとしているが、これらの政策は中長期的な財政悪化と将来の増税をもたらすことになる。このような厳しい財政事情を踏まえ、オバマ政権は国防費抑制政策をとっている。対テロ戦争など当面の脅威に対処するための戦力整備に予算を集中し、中長期的な脅威に備えるためのハイテク装備を抑制することを方針としており、今後米軍の世界的な展開能力が低下し、米軍再編も加速されるであろう。遂行中の対テロ戦争についても、イラクから予定通り引き揚げるだけではなく、アフガンからも撤兵が進められる可能性が高まってきている。
このような米側の事情を踏まえると、民主党がインド洋での給油支援を止め、その代わりにアフガン再建のための財政負担やイラクの復興支援のための民生支援を強化すると申し出ることは、米国にとっても歓迎すべきことかもしれない。また普天間の海兵隊の移転問題も、本国への一挙撤収というドラスティックな対応が日米間で合意される可能性もなしとはしない。日米地位協定すら、冷戦後の在独、在韓米軍の大幅削減といった実情を踏まえ、国際的枠組みの中で再検討される余地も生まれてくるかもしれない。
このような視点からみれば、民主党の一部の政策がオバマ政権に受け入れられ、新たな方向に日米関係が展開していく可能性もあるといえる。しかし、その方向性が日米同盟関係の空洞化につながるとすれば、事は重大である。(つづく)
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