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2009-10-06 07:39
公明「自民離れ」なら、自民政権復帰絶望的
杉浦正章
政治評論家
自民党がいま一番恐れなければならないことがあるのに、総裁・谷垣禎一以下まだ気づいていない。それは公明党の自民党離れだ。既に公明党は25日投開票の参院神奈川、静岡両補欠選挙で自民党候補への推薦を見送る方針を固めた。どっちみち勝てそうもない両補選はいい。しかしこれが、9か月後の参院選の協力にまで及ぶと、「ねじれ達成」をテコにした政権奪還は絶望的になる。ここは土下座してでも選挙協力を復活させなければならない時なのに、新執行部はのほほんとしている。総選挙で大敗して脳しんとうに加えて、ぼけまで併発しているのではないか。
自主投票を決めたあと、静岡県本部幹部は「下野して状況は大きく変わった。これまでの関係は改めていく」と述べている。同党内の空気は、総選挙結果が自民党への逆風の影響をもろに受けたという“被害者意識”に凝り固まっており、これが参院選挙協力の否定に直結する可能性はあり得ることだ。公明党の自民党離れと民主党への“秋波”は総選挙直後から発生している。当時の民主党代表・鳩山由紀夫がCO2の25%削減を表明したとき、環境相・斉藤鉄夫が「高く評価したい」とエールを送ったのが始まりだ。これを単に職務上のエールと見るのは間違いだ。公明党の“規律”は、独断で敵対政党にエールを送れるほど甘くはない。新代表・山口那津男も「自民党との選挙協力自体は、そうあってしかるべき、というものではない」と選挙協力に消極的と取れる発言をしている。
もし、参院選の選挙協力が成立しなかったらどうなるか。簡単だ。早期政権奪還への道が閉ざされることになる。自民党の政権奪還戦略は、参院選挙でねじれ現象を起こして、安倍晋三以来の歴代政権が被った衆参「ねじれ被害」を民主党政権に対して巻き起こすことしかない。それには過半数の122議席に達しなければならないが、自民党単独では100%不可能だ。いわゆる発射台となる非改選議員がたったの37議席しかないからだ。しかし自民、公明、改革クラブの3会派合わせれば、厳しいが不可能ではない。3会派合計で非改選が48議席であり、改選59議席に15議席の上積みをすれば過半数に達する。それでも難しいとの見方があるが、だれが小泉郵政選挙の300議席を予測できたか。選挙は“風”次第だ。1980年から10回の参院選挙をみると、自公合わせれば74議席は不可能ではない。政党が異なるから一概には言えないが、両党合計で74議席を上回るケースが5回ある。2回に1回は77議席から82議席に達しているのである。ひたすら“風”に乗ってきた小沢選挙が来年夏まで続くと見るのは甘い。
公明党も、自民離れをして活路を見いだせるかという問題もある。政権3党は衆参とも十分に数が足りており、公明党を毛嫌いする小沢一郎が院政だ。いくら悪女の深情けのような“秋波”を送っても効かないのである。参院で選挙協力をしなければ、衆院での自民党との小選挙区の協力関係維持も困難となる。公明党は小選挙区で自民党の協力がなければ、小選挙区から撤退するしかない。その決断ができるか。また政策の整合性の問題もある。CO2はともかくとして、内政、外交・安保は自公政権で打ち立ててきたものであり、公明党も党内論議を経てきている。八ッ場ダムにしても、インド洋における給油にしても、国会では自公共闘で行かざるを得ないのだ。公明党自身もジレンマを抱えているのだ。自民党離れを食い止めるには、10年間の連立で出来上がった人間的な信頼関係も役にたつ。幹事長・大島理森は国会運営においても何度も自民党離れを食い止めてきたが、まさにいまがその関係を生かす時だろう。与野党攻防の焦点は、公明党の自民党離れを食い止められるかどうかにかかっている。
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