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2009-11-08 02:15
(連載)鳩山政権成立に歴史的意義ありや?(1)
吉田 重信
元駐ネパール大使、元駐上海総領事
鳩山首相は、国会での初めての所信表明演説で、「平成維新が始まった」とし、「30年後、50年後に歴史家がそう評価するように努力したい」と述べた。この首相の発言は大言壮語なのだろうか?私はそうは考えない。過去120年のわが国の歴史の流れを考えれば、鳩山首相の発言は、全くの夢想とは言い切れない。少なくとも、その夢を語る口調は、国民に「あるいは平成維新が始まったかも、そうなら賭けてみよう」と、その気にさせる効果があるようだ。小泉元首相もこの手を使った。郵政改革法案をめぐる選挙で、国民はまんまと騙されたようにみえた。だから国民世論は信用できない、という見方もできる。だが、国民の方では、「自民党をぶっつぶす」という小泉元首相の発言を案外信じて、同首相を後押しして、自民党をつぶさせたのである。実際、郵政民営化改革は、自民党を分裂、混乱させ、結果として民主党に漁夫の利を得させた。だから、一概に「国民はバカだ」とは言えない。
自民党は、選挙で大勝したことにより、あとで考えると最大の危機に陥ったのだ。ところが、後継者たちは、大きなマイナス遺産を引き継いだことに気づかず、安倍元首相などは「憲法改正の好機だ」と読み違えて、強引に突き進んだ。結果は、みたとおりである。わが国の近代史の流れをみれば、わが国は、2度の大きな転換点を経て、変革を成し遂げてきた。最初は、明治維新を契機とする変革であり、2回目は、敗戦を契機とする変革であった。これらの変革には、いづれもが主として外部要因を契機とする変革であり、外部要因への対応(response)であった、という共通の様相があった。しかも、2回目の場合は、占領した米国の指導のもとの変革であった。
明治維新とそのもたらした変革は、外圧による国民的危機感を背景にして、中堅武士階級を中心とする勢力によって担われたが、その勢力は、天皇を担ぎ出し、その権力を利用しつつ、「富国強兵」をはかった。しかし、彼らの大半は、自らの栄達を第一に考え、国家の要職をあさり、結局は国民を支配する一大官僚勢力となった。明治維新は、「富国強兵」には成功したものの、結局は、国家の崩壊、つまり外国に運命をゆだねざるをえない敗戦をもたらした。明らかに国家としては失敗だった。失敗は、表向きの天皇の独裁権のもとに、一部(とくに軍事)官僚勢力が実権を握る、明治国家体制の欠陥に起因した。
敗戦後、今日までわが国で政権を担ったのは、官僚階級たる吉田首相をはじめとする保守派勢力であり、出来た政権は、イラクの現政権と似て、米国のいうならば傀儡政権であった。米国は、これまでその利益と都合に合わせて日本の政権を作リ、操作すベく画策してきた。当時米占領当局は、その意向に逆らうかも知れない、鳩山現首相の祖父を公職から追放し、政権に就くのを阻止するまでしたのである。そして生まれた吉田政権に対し、当初は日本を完全非武装させるため、都合のよい憲法を押し付けたが、朝鮮戦争などで冷戦が顕在化するや、日本に再軍備させ、米国の基地の永続化をはかるとともに、明治体制を支えてきた官僚勢力の温存をはかった。これが最近までの「日米同盟体制」の現状であり、その中で、日本は、米国の対世界政策の一端を担ってきた。(つづく)
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