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2010-01-22 09:34
(連載)インド洋における日本のプレゼンス低下を憂慮する(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
ソマリア沖の海賊対策でも中国は迅速に対応した。中国は外洋での作戦遂行能力を高めるべく、海軍の強化に極めて力を入れている。海賊対策への参加は、中国にとって実に都合のよい、海軍の演習および調査活動になっている。給油活動を実施することになれば、同じ意味合いを持つことになる。ただ、ソマリア沖海賊対策と事情が異なるのは、海賊は国際法上「人類の敵」とされ普遍管轄権が適用されるから、公海上でこれを取り締まるのは全ての国にとって制限されることのない権利であるのに対して、「不朽の自由作戦」はもとはといえば9・11同時多発テロに対する米国とその同盟国による集団的自衛権の発動として始まったという点である。このため、中国が給油活動を望んだからと言って必ずその希望が叶えられるというわけではない。
現に、2007年に旧テロ特措法の期限切れによって海自が一時撤収を余儀なくされた際には、中国が給油活動を申し出たものの米国が断ったと言われている。インド洋における中国のプレゼンス強化は米国にとっても都合のよい話ではないのだから、2007年と同じ対応をするのが論理的には順当である。ただ、今回はオバマ政権がアフガン重視を打ち出していることから、中国の申し出を受け入れないとも限らない。米国にとっても厄介な判断を強いられることになる。
鳩山政権がインド洋の海自の補給活動終了を強行したことは、中国の外洋への進出圧力をさらに高めるきっかけを作ることに繋がるおそれがある。もちろんそれは我が国にとって望ましい事態ではない。中国は国家戦略として海洋進出を精力的に行なっているのであるのだから、これをとどめることはまず無理というものだが、わざわざ我が国のプレゼンスを低下させて、結果的に中国の海洋進出を促進するようなことは、軍事的合理性を欠き、我が国の国益に真っ向から反することである。今更、海自を再派遣するなどとも言えまい。OEF-MIOの文脈からは全く逸脱するが、インド洋でのプレゼンス強化の観点からは、依然として終息の気配が全く見られないソマリア沖海賊対策のために海自の艦船を増派することぐらいしか考えられない。鳩山政権の根本的に誤った判断は、大いに禍根を残すであろう。(おわり)
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高峰 康修 2010-01-21 09:56
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高峰 康修 2010-01-22 09:34
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