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2010-11-03 12:10
(連載)ビデオ映像限定公開は保身目的の場当たり(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
また、菅政権はビデオ映像非公開の直接的根拠として刑訴法47条の「訴訟に関する資料は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない」という規定をあげていたが、こんなことは「法匪の論理」といっても過言ではあるまい。処分保留で釈放され中国に帰ってしまった中国人船長に対して公判が行われる可能性などゼロである。その時点で刑訴法47条を云々する意味は失われている。
菅政権は、対中配慮のためビデオ映像の公開を控えてきたということになっているが、それで中国から何らかの見返りがあったわけでもない。つまらない配慮をしたせいで、足元を見られただけである。先にベトナムのハノイで行われた東アジア・サミットでも、日中首脳会談を一方的にキャンセルされるなど、振り回される一方であるし、レアアースの対日輸出制限の問題にしても正常化していない。そして、中国は着々と尖閣、そして東シナ海の「核心的利益」化を進めるべく、漁業監視船の同海域への派遣を活発化させている。
ただ、菅政権の対応は、真に日中関係を考慮したもの(それが誤った方向性であれ)であるというよりは、保身を目的とした場当たり的なものであると捉えた方が正しいのかもしれない。公開を逡巡してきたのは、ビデオが公開されたならば、船長釈放の不当性を攻撃されかねない、という懸念からである。今回の限定公開にしても、畢竟は国会対策である。このような重大な外交案件を政争の具にしているとすれば、国益を損ねること著しく、その罪は極めて重い。
「外交は超党派」というのが原則だが、民主党は野党時代から、それに真っ向から反するようなことばかりやっている。この体質が改まらない限りは、日本外交にとって厳冬の時代が続くことになろう。(おわり)
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(連載)ビデオ映像限定公開は保身目的の場当たり(1)
高峰 康修 2010-11-02 17:08
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(連載)ビデオ映像限定公開は保身目的の場当たり(2)
高峰 康修 2010-11-03 12:10
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