仮に議決が新議会に持ち越され、条約の批准の見通しが立たなくなるとしたら、一昨年4月のプラハ演説で幕開けした「核なき世界」へ向けての動きは、本年4月の米政府による「核政策見直し」の発表、ワシントンでの「核セキュリティー・サミット」の開催、そして5月のNPT運用検討会議での「行動計画」を含む最終文書採択にもかかわらず、最終的には挫折を余儀なくされたであろう。核軍縮の前進のために、折角開かれた「機会の窓(Window of opportunity)」が僅か2年足らずで閉ざされる可能性は少なくなかったのである。
さらに好ましいことに、本年8月9日のこの欄の拙稿でも述べたように、新STARTの柱の一つである戦略弾道ミサイルの弾頭に通常兵器を搭載する「即時地球規模攻撃(Prompt Global Strike)能力」についても、当初は強く反対していたロシアも、中国も、強い関心を示しはじめているとのことである(ハドソン研究所のクリストファー・フォード研究員の12月19日付論文)。換言すれば米国以外の核兵器大国の間でも、核兵器への依存度を減らす傾向が看取されるようになってきた。