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2011-02-23 07:29
関ヶ原前夜、敗戦必至の菅民主党政権
杉浦 正章
政治評論家
政局は関ヶ原は、決戦の朝に戦場をおおっていた濃霧が次第に晴れ、東西両軍の布陣がくっきりと浮かび上がった形だ。東軍は野党連合だ。公明・社民両党が2月22日旗幟(きし)を鮮明にさせ、主要予算関連法案再可決拒否に固まった。西軍は「菅=石田三成」を中心とするが、内に「小沢=小早川秀秋」の寝返りの可能性を秘めている。菅三成は朝からしくしくと腹痛の状態にあり、不吉な予感が胸をよぎっている。来週明けにも新年度予算案は衆院を通過するが、主戦場となる予算関連法案をめぐって激突、菅三成は遅かれ早かれ「内閣総辞職」で首を差し出すか、「解散」かの選択を迫られそうな雲行きだ。戦いの帰趨を決める決定的な動きが22日にあった。一つは、社民党が両院議員懇談会で、赤字国債発行のための特例公債法案、法人税率引き下げの税制改正法案にそれぞれ反対することを決めたことだ。これにより、参院で予算関連の両法案が否決されることが確定した。衆院でも「小沢別働隊16人」の動きを待たずに、3分の2の多数で再可決することは不可能となった。普天間移設予算に反対する左翼政党の神髄を発揮したのだ。
もう一つは、公明党の動きだ。民主党代表代行・仙谷由人が15日に公明党国対委員長・漆原良夫にひそかに「菅の首と引き替えの予算関連法案処理」を打診して、すわ方向転換かと疑われたが、結局旗印を東軍に鮮明化した。代表・山口那津男は記者会見で「民主党マニフェストの破綻(はたん)は明確になった」と予算への反対を明言すると共に、「首相退陣を賛成の条件にする考え方はない」と述べ、退陣しても特例公債法案や子ども手当法案などの関連法案の核心部分に反対する考えを正式に表明した。公明党の強硬姿勢の背景には、創価学会の意向が強く働いているといわれる。世論の影響を受けやすい学会幹部や婦人部が、民主党政権の体たらくと菅の支持率急落に強い危機感を抱き、一時は民主党になびいた山口を引き戻した結果であろう。もはや解散・総選挙が4月の統一地方選挙とのダブルとなってもやむを得ないとする腹を、山口以下公明党幹部はくくったといえる。
この両党の方針決定は、民主党執行部の一縷(いちる)の望みを打ち砕いた。菅は、予算が通ってもそれを執行する関連法案が通らない、という事態に直面する。政権内部は、足下から首相退陣論が出るばかりか、幹部からうろたえたとしか思えない発言が目立つようになった。その最たるものが、国民新党代表・亀井静香だ。「もう一度、内閣改造をやれと何度も首相に言っている。自公両党からも人材を登用する救国内閣を実現すべきだ」と宣う始末だ。関ヶ原の戦が始まろうとしているときに、敵の武将を官職で釣ろう、などと言う甘い手段が通用するわけがない。「気は確かか」と言いたい。経済財政相・与謝野馨から「亀井代表はいろいろなアイデアを出す方だが、これまでも、できたこととできないことがあったと思う」と皮肉られるようではおしまいだ。
菅と幹事長・岡田克也が支持率回復への決め手とみて懸命に取り組んだ「小沢切り」も、世論調査の結果がマイナスの作用でしかないことを物語っている。優柔不断の揚げ句に「党員資格停止」などという中途半端な処分では、国民は納得しない。「小沢おんぶお化け」を切るなら、議員辞職まで追い込む腹が据わっていなければ無理だ。結果は党内対立を一触即発の危機に直面させてしまった。このように天下分け目の関ヶ原は、戦う前から勝敗が決まっている形だ。ここまで来た以上菅は、政権に恋々とすがるべきではあるまい。国家、国民のためを言うなら、自らの出処進退は早いほどよい。
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