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2011-06-23 11:02
注目すべきパネッタ次期米国防長官の登場
川上 高司
拓殖大学教授
ゲイツ国防長官が6月30日をもって退任する。ラムズフェルド国防長官の下で傷ついた政軍関係修復の任を帯びたゲイツ長官は、任務4年半を見事に務めあげた。次の国防長官の至上命令は、国防費の大幅削減である。オバマ大統領は2023年までに4000億ドルの国防予算の削減を命じた。その大役を担うべく指名されたのが、現CIA長官のレオン・パネッタである。パネッタはクリントン大統領時代にホワイトハウスの予算局長を務めた予算のプロである。オバマ大統領からCIA長官に任命されたときは、専門違いだと批判を浴びるほど情報部門とは関連のない人物だった。国防分野にもそれほど精通しているわけでもなく、ブッシュ政権時代に超党派の「イラク研究グループ」に属したことがある程度だ。その意味ではパネッタ起用の意図ははっきりしているといえよう。
予算削減のためなら手段を選ばないシビアな“仕分け人”であるパネッタは、同時にオサマ・ビン・ラデン殺害を強行した中心人物である。ビン・ラデンを殺害することで、アフガニスタン戦争に区切りをつけ、撤退の道筋をつける。もはや支えきれないほどのコストとなっている戦費の削減のためには、この作戦はパネッタにとって避けては通れなかったのかもしれない。
当初オバマ大統領はビン・ラデン襲撃作戦を却下したという。ブログ「ホワイトハウス・インサイダー」など複数の情報によれば、大統領とバレリー・ジャレット大統領上級顧問はこの作戦に反対していた。だがパネッタCIA長官は、却下されても密かに作戦を詰め、それをクリントン国務長官が強く後押しをして、ゲイツ国防長官やペトレイアス司令官の全面的支持をとりつけた。バイデン副大統領もオバマ大統領より先に作戦の詳細を知っていて、支持派はかなり強硬な説得をしたようである。情報筋によれば、最終的に大統領が作戦計画の実施を知ったのは、海軍特殊部隊突入の直前であったという。
最高司令官である大統領の知らないところで作戦が練られ、外堀を埋められた大統領が作戦継続を認めざるを得ない状況であり、それを推し進めたのがパネッタ次期国防長官であったとしたら、今後の米軍のオペレーションは全く異なるものとなろう。グローバル・ホークのような無人偵察機が音もなく現れて、突然“標的”を攻撃する頻度が増すのであろうか。73才の老練な政治家をどうコントロールするのか。ホワイトハウスの権力闘争から目が離せない。
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