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2012-09-03 06:52
谷垣失速、「石・石対決」が軸か:自民総裁選
杉浦 正章
政治評論家
やはり3年間の任期中に「谷垣降ろし」が出たり、引っ込んだりしたように、自民党総裁・谷垣禎一(67)は人望がなかった。これまで支持してきた有力者が次々に離反。ついには出身派閥の会長・古賀誠までが見放しそうな状況になってきた。この結果、無競争再選を目指していた谷垣は、一転して出馬断念に追い込まれかねない事態に到ろうとしている。谷垣が断念すれば、総裁選は乱立模様となり、前政調会長・石破茂(55)、幹事長・石原伸晃(55)、元首相・安倍晋三(57)、元官房長官・町村信孝(67)、参院議員・林芳正(51)らの戦いとなりそうである。乱戦の中であえて流れを見極めれば、石破対石原の対決を軸に展開しそうである。谷垣は、どうやら野田を解散に追い込むのに必死で、足元を全く固めていなかったことになる。これまで元首相・森喜朗と石原が谷垣支持を公言していたことから、これで盤石とみていたフシがある。
9月2日もNHKで「3党合意がどういう形になるか。軌道に乗るまでは、党首として責任がある。逃げるわけにはいかないと考える」となお意欲的だが、実態は四面楚歌だ。森はこれまで「今のところ、どう見ても谷垣さんしかいない。(総裁就任から)3年我慢してやってきたし、 瑕疵 ( かし ) はない」と公言してきたが、自民党が自民党を批判する問責決議に賛成して態度を豹変。「がらっと気持ちが変わった。谷垣禎一総裁にも限界があるのではないか。総裁選に巻き込まないようにしてあげた方が良い」と事実上の谷垣降ろしを宣言するにいたった。「谷垣さんがやるなら支持する」としてきた石原も、2日方向を大転換した。「私はこれまで谷垣さんを支えてきたが、谷垣総裁を支えるために政治をやってきたわけではない。日本、自民党を何とかしなければならない」と一転谷垣への“見限り”を宣言、自らの出馬に意欲を示した。谷垣は、先に古賀に支持を求めて会談したが、古賀は色よい返事をしなかったといわれる。谷垣は3日にも再度会談する構えだが、2日になって古賀は「会っても無駄だ」と漏らしており、支持どころか、出馬の断念を促す可能性すらあるようだ。谷垣はまさに失速状態に陥った。
こうして総裁選は、混戦の様相を一層強め始めたが、林は参院議員であることが災いして、伸びる気配がない。残る石破、石原、町村、安倍の4人のうち、町村と安倍は派閥の身内同士で争う分裂選挙の形となって不利。結局、石破と石原の「石・石対決」となる公算が強い。町村派の事実上のオーナーである森の動向だが、2日のテレビで「首相を辞めたのは身体の関係だ。国民にきちんと説明できているのか。国民がどう見ているかが大事だ」と、安倍の一番痛いところを突く発言をした。明らかにに安倍擁立に否定的である。こうした事情を背景に、安倍は石破に接近している。外交・安保でも波長が合い、二人は近く共通の「勉強会」を発足させる。どっちか多数を取った方になだれ込む可能性があり、1回目の投票で過半数に達しなければ、連合の形をとって対応する流れとなっている。
石原は「爺殺し」の別名の通り、森や古賀など党長老の受けがよい。特に古賀は谷垣不支持の場合は、石原で派内をまとめる可能性がある。一方森も個人的には石原を支持したい考えのようだが、派閥を一本化出来る可能性は少ない。引退して、なお参院に影響力を持つ元官房長官・青木幹雄も、石原は親しい。党長老らは総選挙で維新の会の橋下徹との対決になることを想定、石原を党の「顔」として対抗しようとしているようだ。一方石破は、テレビでの切れの良さもあり、地方党員の支持が強い。今回は国会議員票200、地方票300で、地方を握る候補が有利となるため、石破の地歩はかなり固い。町村は「数少ないチャンスだと思い、不退転の決意で進みたい」と意欲を見せるが、谷垣と同年齢の67歳であり、世代交代の波もあり、勢いは出そうもない。こうみてくると、谷垣が再選困難となったことを背景に、石原が立候補を正式表明すれば、流れは「石・石対決」軸の展開となり得るが、誰が総選挙を経て「次の首相候補」になるかは、まだまだ混沌としている。
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