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2013-09-15 11:00
(連載)国際法上、人道的介入の武力行使は可能か(2)
角田 勝彦
団体役員
なお、ロシアはアサド政権だけでなく反体制派も化学兵器を保有しており使用した証拠があるとしているが、事実関係については承知しない。ただし、日本政府筋は、9月7日、安倍首相がアサド政権を非難する共同声明に加わったことに関し、「米国政府から日本政府に、アサド政権が化学兵器を使用したことを示す証拠の提示があった」と述べている。
オバマ大統領はこれまで、シリア内戦への米国の直接関与について、慎重な態度を取ってきたが、これで強硬姿勢に転じた。化学兵器の使用は「レッドライン(越えてはならない一線)」とアサド政権に強く警告してきたからでもある。オバマは、アサド政権側が化学兵器を使用したとみなし、国連の調査結果を待たず、英国やフランスなど北大西洋条約機構(NATO)諸国との間で、政権側に対する軍事攻撃(爆撃中心)検討を発表した。その後米国は10カ国程度が有志連合として行動に参加する旨明らかにしたが、支持は希望通りではなかった。8月29日、英国下院は英政府が計画したシリアへの軍事攻撃を拒否した。フランスは同調しているが、NATO事務総長は、NATOとしての参加はないとしている。
9月5~6日にロシア・サンクトペテルブルクでのG20サミットでも、オバマはプーチンと意見が分かれ、シリア非難で11カ国(日本参加)声明を発出するにとどまった。アサド政権を擁護してきたロシアは、これまで対シリア安保理決議案に3度拒否権を使ったほか、8月に化学兵器使用を非難する安保理報道声明案にも反対した経過がある。なお、プーチンは、9月3日国内テレビ・インタビューで、「現行の国際法では、(化学)兵器の使用に対する制裁は国連安保理だけが行える」と述べ、対シリア軍事攻撃に踏み切る方針を決めたオバマ大統領を強く非難していた。
米国内でも軍事行動はあまり支持されていない。オバマ政権が議会に承認を求めている対シリア軍事攻撃の決議案は、上下両院とも承認が容易でない。世論調査でも、シリア攻撃への反対が賛成を上回っている。(つづく)
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