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2013-10-11 18:07
(連載)シリア:わずかに見えた政治解決の明かり(1)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
オバマ米大統領は9月10日(日本時間11日午前10時)シリア問題についてホワイトハウスから米国民に向けて説明を行った。その中で同大統領は、サンクトペテルブルグでのG20会議でロシアと協議したシリアの化学兵器を国際管理するとの提案についてシリア政府が前向きに回答してきており、今後、国連安保理での協議で具体化させるとの考えを示した。この演説で、シリア問題の政治解決にほのかな明かりがともったように見える。
そこで、前回の拙稿「議論が深まらない『保護する責任』」において、安保理決議の内容に言及した上で「速やかに採択すべき」と述べた点について補足したい。同論考では、国際社会がリビアで文民を保護する目的で国連安保理決議1973号に基づき武力介入を行った事例を参考に、シリア問題でも「保護する責任」を優先すべきだと述べた。そして、国際刑事裁判所へ人権侵害の実態調査を付託するとともに、アサド政権に化学兵器の廃棄と市民の保護を求めるべきだ、と述べた。この3点を挙げた理由について簡単に述べる。
国連安保理において、2011年にはじまったシリア問題に関する決議案は、過去3回、否決されている。第1回は2011年10月4日(S/2011/612)で、賛成9、棄権4、ロシアと中国が拒否。第2回は2012年2月4日(S/2012/77)で、賛成13、ロシアと中国が拒否。そして第3回は2012年7月19日(S/2012/538)で、賛成11、棄権2、ロシアと中国が拒否である。この3回の採決において、ロシアは決議案がアサド政権打倒に結びつくことへの懸念から、中国は内政不干渉の原則の重視から拒否権を発動し続けた。
この点を踏まえると、「化学兵器の廃棄」「市民の保護」の2点については、ロシアおよび中国との協調が可能だと言えそうである。現在、フランスが安保理に提示している決議草案には、(1)化学兵器の廃棄、(2)約束不履行時の措置、(3)化学兵器使用者の国際刑事裁判所への訴追が盛り込まれていると報じられている。ここで問題となるのは、国際刑事裁判所の活用である。アサド政権を訴追することは政権打倒と結びつくからである。したがって、この点でロシアは慎重な姿勢を示すと考えられる。(つづく)
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